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平方録

竹の寺

浄妙寺で咲き始めたばかりのセツブンソウを見た帰り、県道を挟んで反対側の谷戸にある報国寺に寄ってみた。

鎌倉の竹林と言えば報国寺、報国寺と言えば竹林…で知られた寺で、さすがに厳寒のこの時期は人が少なかったが、観光シーズンには大勢の観光客が殺到する。

そういう場所だから、普段は近寄らないので、訪れるのも2、3年ぶりである。

コロナ禍が過ぎた後、修学旅行の分散化傾向なのだろうか、真冬のこの時期でも市内のあちこちの社寺や江ノ島の参道などで地図を手にした制服姿の生徒が数人のグループをつくってウロウロしているのに出会う。

報国寺でも同様にいくつかのグループが居て、にぎやかな声を上げていたが、400円の拝観料が必要な竹の庭には中学生の姿はなく、表のにぎやかさとは打って変わった静寂に包まれていたのが、キツネにつままれた気分である。

彼ら彼女らにしてみれば、いつも暮らしている故郷では竹藪なんかあちこちに点在していて、珍しくもなんともないのだろう。

そんな竹藪風情を見るのに、何でお金を払わなくちゃならないのか…と言う疑問が浮かぶのも無理からぬところだ。

どこかで饅頭や焼き立てのせんべいでも買ってワイワイ騒ぎながら腹を満たした方がよっぽど旅の思い出になる。

実はボクだって家の周りは竹藪だらけだし、近所の寺には規模は小さいながら絵になる竹林があり、たまにブログで使う写真に登場させている。

円覚寺や建長寺にも竹林はあるし、扇ガ谷にある水戸徳川家ゆかりの尼寺英勝寺の竹林も捨てたものではない。

それでも立ち寄ってみたのは、まぁ、パトロールの一環みたいなもので、たまにはのぞいて見て様子を抑えておこうという動機からである。

オフシーズンで観光客の姿がほとんどいないのが、こういう人気の寺をのぞく時の要諦と言っていい。

早速巡ってみると…竹林内を巡る園路の一部に橋が架けられたような場所があり、どうやら最近作り変えられたものと見える。

今回はひっそりと静まり返った竹林内を自由に動き回れたからいいようなものの、これが観光シーズン最盛期ともなれば、ここの園路は身動きが取れないほどの人波であふれる。

園路の形状の変化など、誰が気付くだろう。

とはいうものの、さすがは腐っても鯛。何より報国寺は腐っちゃいない(ように見えた)し、冬でも手入れは行き届いている。
竹林の林床には枯れた竹の葉がびっしりと敷き詰められた上に藁が一面すき間なくかぶせられ、適度に間引きされた株同士の間隔も広すぎず狭すぎず、見通しがよさそうでそうでもなく、従って息苦しさを感じさせるようなところもなく、ゆったりとしていてなかなか心地よい空間になっているところがさすがだと思う。
「竹の寺」の看板は引き続きそのまま掲げ続けてもらってもよさそうである。
 
 

竹林内拝観料は400円


藁の明るい色調が竹林をさらに明るくしている


わざわざ園路を断ち切って橋を架け、変化をつけている


株間が詰まり過ぎないところが良い塩梅










境内のやぐら
 
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