平方録

バラの開花を邪魔する奴ら

青空と新緑の下で庭の草取に時間を費やした。

午後は少し強まったが、午前中は微風がバラの優しい葉っぱをなでて行き、気持ちの良いことこの上ない。
しかも短パンで作業しても、今の時期は蚊に食われることもなく、より快適なんである。
草取りというものは坐禅に相通じるような所があって、草を根こそぎ取っていく作業を黙々と続けていると、大げさだが「無」の境地に入りかけるんである。
「無の境地そのもの」と言い切る自信がないため、「境地に入りかける」という表現を使ったのだが、要するに頭から雑念が消えて行って、草取りだけに集中している自分に気づくことがしばしばある、という意味である。

こういう気持ちになるというところもまた、草取りを好む理由なのだ。
庭が見違えるように綺麗になるだけではないのである。
広い世の中だ。趣味に「草取り」を挙げる人がいるかもしれない。
そういう人がいたら、その気持ちは良く理解できるし、共感も出来るだろう。

地面にへばりついて、決して楽な姿勢ではないのだが、しゃがみ込んで下を向きっぱなしで続ける作業が楽しいなんてのは、ひょっとして変人の類かもしれないなどと思ったりもするが、何より心が落ち着くのである。

時々足腰を延ばすが、その時にはしばらくバラの株に目を集中させる。
今年から無農薬栽培をすることに決めたから、害虫を見つけては指でつまんで退治しなければならないのだ。
これがまたいささかコツを必要とする作業なんである。
何せ相手は人に発見されまいと、あの手この手を使ってごまかそうとするのだから、鳥の目を持たなくてはならないのだ。

傑作なのはエダシャクという尺取り虫の一種である。
葉をかじったり、場合によっては蕾の上半分をかじってしまい、蕾を台無しにしてしまう憎っくき敵なんである。
こいつが茶色の身体をしていて、枝のようにピンと背筋を伸ばして動かないでいるところなどは、危うく騙されかけてしまう。
本物の枝にしか見えず、それはそれは良く出来ているんである。
でも、見つけてしまうんだな。擬態して澄ましているところを、見ぃ~っけ!って感じで見つけて退治するのである。

昨日は8っ匹も捕まえた。
葉っぱがかじられているから、その証拠が頼りである。遠くに逃走せず、犯人は近場に潜んでいるのだ。

シロイチモンジヨトウという虫は新緑の色で身体を包んでいるから、何気なく見ていたのでは気付かないことが多い。
こいつは緑色で擬態しているつもりだから、白昼堂々と活動し、葉を食べ、やはり柔らかい蕾も食べてしまうんである。
葉っぱだけなら、少々は我慢するが、エダシャクにしろイチモンジヨトウにしろ、禁断の蕾を台無しにするのだから、その責めは受けてもらわなくてはいけない。
シロイチモンジヨトウは2匹見つけた。1匹はかなり大きくなっていたから、随分とうまい汁を吸われたことだろう。
その代償は払ってもらった。

難敵はバラゾウムシである。こいつは蕾に穴をあけて汁を吸う。蕾はその時点でアウトである。
吸血鬼みたいなやつだが、真っ黒な身体をしているのに、見つけるのが難しいんである。
ことしは被害には遭っているのに、敵の姿が発見できずにいるのだ。
正直いって悔しい。忍者みたいなやつなのだ。

アブラムシも液を吸う。こいつは大量に発生し、蕾や葉の汁を吸う。
栄養を横取りされてしまう蕾が素晴らしい花を咲かせるわけはなく、こいつらも目障りである。
去年までは殺虫剤を撒いていたが、益虫まで遠ざけることになってしまうから、止めたんである。
テントウムシはアブラムシの天敵で、好んで食べてくれるのだが、まだ2匹しか目にしていない。
一刻も早いテントウムシ軍団の到来が待たれるのである。

見つけては指でつぶしたりしていたのだが、インターネットで荷造り用のクラフトテープのことを知り、これを使っているのだ。
テープのべたべたの部分を近づけると、面白いように張り付くので、根気さえあれば、相当な数が退治できるのである。
取り残したものはテントウムシさんに任せればいいのだ。

もう一つの大敵、うどんこ病と黒点病予防には自然抽出エキスを希釈したものを散布しているので、益虫を遠ざけてしまう事はない。
かくして益虫と共にバラを守っていくのだが、これ以外にもトカゲが何匹もいて、夜になれば毛虫などを探して食べているらしいし、シジュウカラなどの小鳥やクモやカマキリの類も害虫を食べてくれる頼もしい助っ人である。
この無農薬栽培の結果は11月のシーズン終了時に判明する。その効果や如何にってところである。




身体をぴんと伸ばして枝を装っているエダシャク


上の写真はこの写真を引き伸ばしたものだが、元の写真には左側にも枝が立っている。右側の奴は退治したが、左側のエダシャクには気付かず、写真を見て初めて気がついた。それくらいうまく化けるんである


白昼堂々と活動するシロイチモンジヨトウ


キリギリスの類の未だ幼子のようだが、益虫なんだろうか。エダシャクやシロイチモンジヨトウより身体は小さそうだから出会ったら逃げちゃうんだろうな
。さては役立たずか?
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