平方録

心のありようが大切なのだ

2週間ぶりの円覚寺。
7時半に家を出て、自転車を漕いで行くのだが、切り裂いて進む空気はもう5月だというのに肌寒い。
とは言え、やはり薫風を感じる季節である。
肌寒いといっても不愉快な寒さではないのが救いといえば救いなのだ。
太陽が顔をのぞかせているから、気持ちの良さの方が上回る。

居士林で学生座禅会が開かれているようで、若い男女30人ほどが合流していた。
向き合って座っている大方丈の反対側にこちらを向いて座っているのだが、50年前の自分の姿を見るような気分である。
どういう動機で参禅しているのか。今は禅ブームだそうで、雑誌などが特集を組んで体験記などを掲載するくらいだから、比較的関心が高いのかもしれない。
自分の心と向き合う、という禅の教えに触れて社会に出て行くことは、それだけでも十分に意味のあることだと思う。

私のように、仕事に就いていた40数年間は不規則な生活を送っていたために、門をくぐることすらできず、すっかりご無沙汰してしまっていたが、それだってこうして戻ってきているのだ。

第1、3、5日曜日は伝心法要という禅の古い教えが書かれた書物を基に、横田南嶺管長が「解説」してくれるのだが、この日は学生が多かったせいもあるのか、先々週の続きの個所がたまたまそうだったのか、「自分の心と向き合う事の大切さ」を諄々と説かれていた。

人には誰しも妄想というものがある。
雑念とも呼ばれるが、坐禅で坐っていれば必ずこの雑念が湧いてくる。振りほどこうと意識すればするほど、次から次へと湧いてくるものなのだ。
しかも「これではいかん」と気にすればするほど、次から次に湧きあがってくる。
そればかり気にする心が、何倍、何十倍にもなって戻ってくるのだ。
これは坐禅に限らない。日常生活にも通じるところがあるのだ。

例えば、スギの花粉症に悩まされる人が、スギの存在を恨んだって何の解決にもならない。
花粉症は自身の免疫力の低下から引き起こされるものなのだ。
対人関係で、どうしたって気に食わないというような人がいて、一度気にし出すと、その人の一挙手一投足まで気になって、嫌さの度合いが増すことがあるが、何のことはない、そうした心、気持ちを作り出しているのも自分自身の心なのである。

人に限らない。あぁ嫌だ嫌だ、とても我慢が出来ない、と思うような事も、そう思う心がその一点に集中してしまい、嫌さの度合いが増幅されていくというような事が、随分と身の回りに存在するのである。
隣の家のもの音がうるさい、気になってしょうがない、あの隣人の声が何とも耳触りだ、会社の同僚のあのしぐさがたまらなく嫌だ、などなど…
嫌さ加減が強ければ強いほど、結局のところ、自分の心が「嫌だ」を増幅させてしまって、巨大なものにまで育ててしまっているのだ。

ただ、人間には雑念が付きもののように、自分にとって気になって仕方ないもの、嫌だと思い込んでしまうようなものが存在することは致し方ないことなんである。誰でもが思う事なんである。
大切なことは、自分自身で「あぁ嫌だ、嫌だ」という気持ちを、どんどんどんどん増幅させてしまわないで、知らん顔をする方向に持っていけばよい、ということになる。
そもそも、花粉が飛んでいて免疫力に問題があるなら花粉症になるのは仕方ないことなのだ。誰のせいでもない。音が気になるといたって、都会では日常的に身の回りに物音がするのは仕方ないことなのだ。大きいかそれほどでもないかは個人の感覚の差にもよる。あの人のしぐさは絶対に嫌だ、そう思うならば、なるべく見ないようにすればいいじゃないか。嫌だから、かえってじっと見つめてしまっているような事があるんじゃないか。

心のありようを変えることで、随分と気持ちが変わってくるものなのです。
これからの生き方の中で、自分の心に向き合っていくことを、是非心がけてください。

う~む。自分自身の心がなぁ~。来し方思い当たることがあるなぁ。
この話を若い人がどこまで受け止められたかは分からないが、心の片隅に覚えていれば、何かの時にきっと役立つはずである。
学生座禅会の参加者は良い話が聞けたんだと思う。




円覚寺の一番奥の黄梅院は新緑に囲まれている


茶色と白の渋くお洒落な色調のランの一種。名前は分からない


ウメの古木に寄生したセッコク


塀の高さを軽々と越えて咲きほこるオオデマリ


坂村真民の詩=いずれも黄梅院
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