姫と妹君の一家が来月末に愛媛の瀬戸内海に面した小都市に引っ越すことになったのだ。
それで昨日の昼に東京駅前のビルのレストランで送別会を兼ねた壮行会を開き、姫のいとこや叔父叔母が集まった。
そして姫の母親の希望でわが家に1泊して今日、彼女の祖父母の墓参りに行くことになっている。
四国への転居は父親の努める会社の本社があちらにあるためで、そこで重責を担うことになったためである。
この日が来ることはずいぶん前から想定されていたことなのだが、実際にその日が迫ってみると、いつだって姫のそばで暮らしたいジイジとしてはどうにも気持ちの収まりが良くない。
もともと一緒に暮らせる状況にはないのだが、生まれた時から14か月間、ボクとひとつ屋根の下で成長したことと初孫だという点でことのほか思い入れの強い孫なのだ、
振り返れば1歳の誕生日から2か月余り過ぎた2009年1月1日、それこそ目の中に入れて暮らしてきた姫との最初の別れがやってきたのだった。
父親が単身赴任していたアメリカ・オハイオ州コロンバスに向けて出発したのだ。
あの日は早朝の成田エクスプレスに乗って成田空港まで付き添って行き、姫の乗った飛行機の機影が晴れ上がった東の空の彼方に消えて見えなくなるまで展望デッキの片隅でじっと見つめていた。
元旦早々からの傷心は、全身の力が抜けるというのはこういうことかと思わせるには十分で、まっすぐ家に帰る気にはなれず、初もうで客でごった返す成田山新勝寺の雑踏に紛れ込んでは見たものの、すべては上の空で、その時のことはほとんど覚えていない。
アメリカに渡る直前、娘がボクのパソコンにスカイプのカメラを取り付け、無料のテレビ電話ができるようにしてくれた。
それ以降の3年間は週に1、2度のペースでスカイプの映像を見ながら話が出来たので寂しさは幾分紛らすことができたのだ。
そして帰国してもう満6年が過ぎた。
北関東の県庁所在地で暮らしていたから、会いに行こうと思えば直通の普通電車で2時間半座っていれば、何の苦もなく着いたのである。
それが今度は新幹線に乗り岡山で乗り換えて瀬戸大橋を渡り5時間十数分もかかるのだ。
10歳になった姫の成長速度は加速度を増している。これまでのように急に思い立って、というようなわけにはいきそうもないのが、いささか切ない。
こうやって徐々に距離は開いていくんだろうか。
いやっ、例え物理的な距離は開いたとしても……、それをジジイが自ら口に出して言うのは厚かましくもおこがましさが過ぎるか。
畢竟、あるがままを自然な流れに逆らうことなく受け入れて振る舞っていくしかないんだろう……と、そう思うことにしよう。
あるがまま、あるがまま……
5時半少し前、姫がトイレに起きてきてパソコンの前に座っているボクを見て「あ、じいじもう起きてるの…?」と。
そして目をこすりながら小さな声で「おやすみ…」と言いながら雑魚寝の床に戻っていった。
その一連のしぐさがとても愛おしい。
姫たちの壮行会を開いたレストランのあるビルから東京駅を眺める
新幹線や東海道線などが活発に発着する光景を見て4歳になったばかりの孫息子の若は興奮しきりだった
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