東京など1都3県に最後まで出されていた外出規制制限がようやく解かれた6月の初め、おっかなびっくり行ったのが2月以来4か月ぶりの散髪屋だった。
以来、すでに3か月が過ぎ、髪の毛は再び鬱陶しいまでに伸び盛り、特に首筋などを覆う毛足が気になること気になること…
もっとも若かりし頃を思えば、長髪が当たり前の青春時代を過ごしてきたわけだから気にする方が「何だよ今更…」ということでもあるのだが、時を経て歳も取り、考え方も気持ちも変ってしまった。
今は散髪に行くことすら面倒くさくて、たまに行くと次はずぅ~っと先まで散髪の必要がないように出来るだけ短く切ってもらっていたほどなのに。
幸いなことに全体的な髪の毛の量は減ったものの頭皮が露出するような場所も無く、俗にロマンスグレーと言われる毛髪に覆われているから、それはそれで大変結構なことなのだ。
それゆえ余計に見苦しくはしたくないという訳なのだ。
加えてもう少し若い女性と接触する機会があって「わぁ~素敵 !」などと言われてモテたいものだが、憎っくきコロナの奴めがそれすら邪魔立てをする。
そうか、この世界に広がる今の事態はコロナめの嫉妬心が原因か ?!
おぉ、何と罪深いことよ。
それにしても夜の繁華街にたなびく焼き鳥の煙に誘われて赤提灯の灯る縄のれんをくぐってみたい。
縄のれんの奥にはいくつかのテーブル席と脂がしみて黒光りしている長いカウンターがあって、姉さんかぶりの店員がつっけんどんに付き出しを置きながら「飲み物何にします ?」と真っ先に聞いてくる。
秋も深まれば当然のことながら熱燗を頼み、焼き鳥を5、6本注文すると、先に熱燗が届くから付き出しを口に運びながらちびりちびりやり始める。
するとその辺りでようやく周囲の状況もつかめ、今宵の客層がどんなものだかおおよその見当がついてくる。
知人や妻との道連れなら、その範囲での会話に没頭して心地よくなっていくのだが、ぶらりと一人で立ち寄ったとしても聞こえてくる会話にそれとなく耳をそばだてていると、顔を覗き込んでしげしげ見てやりたいような衝動に駆られるようなこともあって、そういう時は知らん顔をして串をかじり、熱燗を舐めて我慢するのである。
それにしても女のおしゃべりをバカにする連中が、何と大声でべちゃべちゃしゃべり続けている事か。しかもくどいのが通り相場なのだ。
何おかいわんやではないか。
馴染みの焼鳥屋はコロナの前に店を閉めてしまっているから、今は居心地のよさそうな止まり木を探すのも面倒だが、やっぱりあの焼き鳥の味と煙が妙に懐かしくてならない。
とは言え、抵抗力の落ちているジジイには夜の飲食店はリスクが高すぎる。
そう思い、思いとどまるだけで、なおさら懐かしさが募り、それが尽きるところはない。
あぁ~あ、脂まみれのカウンターの前に座って1杯やりたいなぁ~
(見出し写真はわが家の玄関扉の脇のガラスの内側にへばりついていたヤモリ君 体調5~6cmのまだ成熟しきっていない個体らしく、何となく可愛らしかった しっかり家を守ってくれたまえ)