平方録

雨水のトキメキ

いつものように午前4時過ぎに起きだしてベランダに出て見たが、一時のような縮みあがるような寒さはない。昨夜の天気予報だと南関東は18度にもなるらしい。
真冬の恰好では汗をかきかねない陽気になるということであり、自転車日和ということにもなる。
「啓蟄」は3月5日辺りからだが、わが身中の虫はそれよりずっと前からモゾモゾ、うずうずし始めている。
風さえ強くなければ格好の日和になりそうである。

今日19日ころから啓蟄前日の3月4日ころまでを二十四節気では「雨水」と呼ぶ。
降る雪が雨へと変わり、氷が溶けだす頃のことを指しているんだとか。
もちろん地域差というものがあるんだろうけれど、農作業の準備を始める時期でもあるが、雪深い地方でもそうなんだろうか。雪国に暮らしていないとなかなか想像しがたい所があるのも事実である。
もっとも先月出かけた豪雪で知られた山形県米沢市周辺では積雪がことのほか少なかったから、春の訪れも早いかもしれない。のんびりできるのもあとわずか、というところだろうか。

わが家ではとっくにひな人形が飾られているが、この季節に飾ると良縁に恵まれるといって、雨水から飾り始めるのが良いんだそうな。
雛まつりも近づいてきて

桃の花色も香りもうふふふふ 花葯 

ですな。

たまたま2013年の旧暦の暦が手元にあってペラペラめくってみると

梅が香にのっと日の出る山路かな 芭蕉

の句に並んで

陽だまりに椅子を持ち出す春隣り 

春浅しうたた寝起こす名のみ風

なんぞと、わが駄句が走り書きされている。3年前は暖冬だったんですナ。
気象庁も気象予報士もこぞって今年も暖冬暖冬と大宣伝していたけれど、鎌倉で氷点下4・6度を記録したり、ポカポカ陽気の日なんてなかったように思うんだけど、今日こそ大丈夫でしょうな。

春が近づいてくると楽しみなのは食べもの。
まず、フキノトウ。これはわが家の北側にも自生し、数日前に妻が「出始めたわよ」と言っていたが、食卓に登るところまでは至っていないようである。数が少ないのかもしれない。
フキ味噌にしてぬる燗か冷酒で一杯やるのはたまりませんナ。

海辺の町ならではの食材では、ワカメ。これは天然ものももちろんだが、養殖も盛んで、春先の材木座や由比ヶ浜の浜辺でのワカメ干しは風物詩の一つである。
しかし、養殖の方は暖冬で海水温が高く、うまく生育できなかったという話も聞くから、ちょっぴり気がかりではある。
あの、湯がいた途端にパッと緑色に変わったところをすくい取って酢醤油の類につけて食べるのもまた、ぬる燗によし冷酒に良しなんである。
世の中には「ワカメ酒」というものも存在するらしいが、こちらは経験したこともない。

サヨリも出回り始めるころである。
捌いてみると分かるのだが、腹は真っ黒である。ノドグロという高級魚がいるが、これが黒いのは喉で、サヨリは腹黒いんである。
しかし、ハラグロは永田町を筆頭に種類も豊富に全国にくまなく分布しているようだが、唇に紅をさした銀色のスマートな魚体の魚の方は、刺身にした身は透きとおるようだし、名前も優しく、如何にも早春の香りをまとった食材である。

そして今頃の季節に江ノ島や腰越など河口脇の漁港で釣り糸を垂らすと体長4、5センチの稚アユが釣れる。
早朝に、小さな針が10個くらいついたサビキで釣るのだが、餌をつけなくても一度に5、6匹づつくらい揚がってくる。
腹側は他の魚同様に銀色だが、背側は一丁前に成魚に似て緑色をしていて、それが朝日に反射すると真っ白な富士山にも映えて、とてもきれいである。
でも、そんな事を楽しんだのも10数年も前のことで、今はやらない。
面倒くさいのと、成魚の方が格段に美味しいからでもある。

これに比べてイワシの稚魚のシラスは別で、こちらは稚魚も美味しい。生は格別に美味しい。資源保護のため正月から禁漁が続いているが、3月11日が解禁日である。
去年は不漁が続いたが今年はどうなんだろう。



シラス漁の解禁は3月11日。今年の相模湾はどんな恵みをもたらしてくれるのか。
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