平方録

今朝もまた寒波さまが

冬の低い太陽のおかげで午後になると陰ってしまう場所でつるバラのせん定をしたら、たかだか1時間半くらいの間だったにもかかわらず身体がすっかり冷え切ってしまい、身体の奥底から震えが来る有り様だった。こういうと随分オーバーな奴、と言われかねないが、実際にその通りでウソもかけ値もない。
仕方なくウイスキーをストレートであおり、ガス風呂に点火して湯に飛び込んでようやく人心地がついた。
思えばとんでもなく冷え切った1日であった。

わが家を取り巻く朝の外気温は-4・6度。
隣町の逗子に暮らしている友人のブログを覗いたら、庭のメダカを入れている甕に1センチほどの氷が張っていて、地元のFM放送局は「ただいまマイナス4度です」とことさら声を大きくしている、と書いてあった。
外に出したデジタル寒暖計の数値を見て壊れてしまったのかと思ったが、空気の濁った東京砂漠でもマイナス2・6度まで下がったそうだから正真正銘の寒波さまがやってきていたらしい。

ちなみに今朝も寒暖計を30分ほど外に出しておいたらマイナス1・9度だった。昨日ほどではないが、今朝もまた「冬日」である。
暖冬予報が聞いてあきれる。
余りの寒さに自転車にも乗っていないし、身体もなまってきた。早く暖かくなっておくれ!

日曜日に出かけた円覚寺の大方丈ではダウン症の書家金澤翔子さんの作品展をやっていた。
特別な筆を使って書かれている大きくてダイナミックな字には圧倒されるばかりなのだが、「風神雷神」に至ってはその存在を知るはずもないのに俵屋宗達が屏風に描いた作品と構図がソックリだそうで、何とも風神と雷神が全身を躍らせているさまがまざまざと浮かんでくるような書であった。
「へぇ~!」「すごい!」と言う言葉しか出て来ない見事なものである。

そういう書家としての作品群は見事の一語に尽きるのだが、それ以外に心を揺さぶられた作品が出品されていた。
10歳の時というから小学4年生で書いた「般若心経」276文字である。
ふすま3枚に並んだ10センチ四方くらいのマス目を埋めた文字は、どれもこれも一瞬の躊躇もないような筆遣いで書かれていて、大人の手だれが書くのとは全く趣を異にした素朴な字なのだが、心に響いてくるのだ。
10歳の子供にこんなことが可能なのかと思わせるほどである。驚いた。

禅の世界では「無」とか「空」などを強調する。
この276文字に限って言えば、まさに「無」「空」そのものなんじゃないかと思わせるに十分であって、突飛な言い方をすれば10歳の翔子ちゃんは禅宗の高僧と同じ場所に立っていたというべきだろう。

大多数の人が兼ね備えているものを持たないまま、この世に送り込まれてくる人がいる。神様の気まぐれなのかどうかは知らないが、そういう人が努力を重ねると、とてつもなく見事な花が咲くことがある。
屈託を捨て、一心不乱に取り組めばこそ到達できる境地なんだ、と勝手に思い込んでいる。



6:01の白みかけた南東の空。日の出は6:47でまだ間があるがカラスの声が聞こえ始め、宵の明星がひときわ明るさを保ちながら抵抗している。
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