北鎌倉の駅前で車を降りて踏切を渡り、総門と山門をくぐって仏殿前を通り越して大方丈にたどり着くまではどう考えたって7、8分は歩かねばならない。
傘1本を頼りに歩いていくのであれば到着までの間にパンツまでずぶぬれになりかねず、防御のためにゴルフの雨合羽を着て出かけた。
ボクの前を歩く参加者の足元はズボンのひざ下からずぶ濡れで、そもそもズボンの色が変わってしまっている。案の定お尻や背中も濡れている。
あの濡れたズボンで足を組むのだろうかと余計な心配をしつつ、雨合羽を脱いで大方丈の中に入ると参加者は極端に少なく普段の半分以下である。
坐り始めると時折吹き込んでくる強風が背中を刺激し寒い。そして手元に置いた小さな経本が風にあおられて方丈内の空中を舞うありさまである。
しかし、ざわついたのも最初だけで直日役の修行僧が鳴らす合図の鐘がチーンと響き、拍子木が打たれるとすぐに静まり返って雨と風の吹きすさぶ音だけになるあたりはさすがと言ってよい。
大方丈の入り口で10人近い女性のグループがガヤガヤと登山靴のようなごつい靴を脱いでいた。
どうやら周囲の山歩きに来たようだが、この雨風ではさすがに断念せざるを得なくなったと見え、ならばとだれでも参加できる日曜坐禅会にやって来たらしい。
普段初心者は別室で15分程度座り方などのイロハを教えられた後、大方丈に合流するが、この日はそのまま別室に留めおいてその場で坐らせていたらしく、最後の読経の時だけぞろぞろやってきた。
これはなかなか良い判断で、もともとその気でなかった人たちを差別ではなく区別するのは当たり前だと思う。
たとえ物見遊山的な冷やかし半分の坐禅体験希望であっても、それならそれで端から坐禅だけを目的にしていらっしゃい、という訳である。
AがダメになったからじゃあBにしようというのはいかにも失礼千万。どうもそういうプライドのようなものが禅寺には漂っているように思えるのだ。
1時間半ほどたって外へ出ると雨風はピタリと止んでいた。
境内に観光客の姿はなく、境内を出ても門前の県道は車の姿さえまれである。
この日は鶴岡八幡宮の境内を中心に鎌倉祭りが開かれる予定で、境内の参道を利用した馬場では流鏑馬が、本殿下の舞殿では静の舞が奉納されるはずなのだ。
観光客の姿も極端に少なく渋滞の全くない静かな街が珍しくて、わざわざ中心部に出て遠回りして家に戻ったのだ。途中、思いがけない僥倖にも遭遇して…
土砂降りと強風の中を午前8時の開門と同時に大方丈に向かう坐禅参加者
坐禅が終わるころには雨は上がり、風も止みんでいた。黄梅院のフジが新緑に映えている
選仏場(右)と居士林の門(左)のかやぶき屋根を覆わんばかりのモミジの新緑
巨福呂坂を下って八幡宮の裏手に着く頃には青空が…
本殿から舞殿を見下ろした時は気づかなかったのだ
流鏑馬は決行だそうで、リハーサルが繰り返されていた
足で馬体を挟んでバランスを取り、両手を使って矢をつがえる
4本の脚が地面を離れた馬上で弓を引き絞り狙いを定め…。実際に射るのは本番だけだがこの動作を繰り返し繰り返しおさらいしていた
観光客が少ないものだから運良く一番前でカメラを構えられた。スマホも大したものである
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