花曇りの一日で、しかも空気は冷え切っていた。
ウキウキと出かけるのが花見というものだろうから気分的には二の足を踏む思いだったが、ダウンジャケットまで着込み、それでも出かけることにしたのは花も終わりに近づいていて、見納めになるかもしれないと思ったからである。
鎌倉のガイドブックにこそ載っていないが、鎌倉のサクラの名所番付があるとしたら大関くらいには推挙してもいいくらいのヤマザクラの名所が近くにある。
地元では「峯山」と呼んでいる。
この山とその周辺は特にヤマザクラが目につく一帯なのだ♪
県道を挟んで続く山並の一際高く見える峰が「峯山」
頂付近はヤマザクラの冠をかぶったように見える♪
峯山に連なる山並にもパッチワークのように…
一旦バス通りの桜並木を横切り、坂を下っていく
坂を下る途中にもヤマザクラがひと塊になって咲き、視界を遮る
県道を越え、いよいよ峯山への上り口にある目印のヤマザクラの下を通過する
空き地が花畑になっている
木々の間を縫って伸びる尾根道をずんずん登っていく
ウグイスカグラの大きな株があった
15分ほどで峯山に到着
山頂には数十本のヤマザクラが今を盛りと咲き誇っている
ヤマザクラ以外の木が極端に少ないのがいい
山頂からは相模湾が見える
ぼんやりとだが富士山も顔をのぞかせてくれていた♪
孟宗竹より細めの竹の林の脇を抜け…
明るく開けた尾根道を歩く
尾根道の両脇にはヤマザクラの巨木があちこちに
最初に峯山を遠望した反対側の山懐にもたくさんのヤマザクラが咲いている
ここに写っている住宅に暮らす1人の「老人」がある日、書斎の窓から峯山を眺めていて、サクラの根元まで行って花を見上げたくなったそうな
しかし…
今はこうして明るく開けているが、老人が思い立った時はこの尾根道の両側は篠竹が隙間もないくらいびっしりと繁っていて、サクラに近づくことすらできなかった
それで市役所まで足を運び「竹藪を始末して下さい」と頼みに行くと、「市の管理する場所ではない」と断られたそうな
県が管理していることを知って頼みに行くと「予算がない」とにべもなく断られ、ならばとネットで賛同者を募ってボランティアを組織し、竹藪除去に自力で取り掛かった
5、6年前のことである
最初は峯山山頂を切り開き、今や周辺の尾根道まで活動領域を広げ竹藪はさらに縮小している
お陰で自然公園のような光景が広がり、弁当でも広げたい気分である
「老人」は今困っている
県に「せめて子連れのお母さんや保育園や幼稚園の子らを引率してくる保母さんたちが困らないように、簡易トイレを設置してほしい」とお願いに行ったのだが、首を横に振るばかりだという
役人の頑迷さゆえの態度なのかどうかはともかく、何か良い知恵はないものか…
尾根道沿いでは至る所でヤマザクラの巨木に出会える♪
この大きな木の根元には「樹齢200年」という標識が添えられていた
ヤマザクラの寿命は千年といわれる
200年ならまだ5分の一だから人間で言えば20歳前というところか まだほんの若造である
長い風雪を経て枝も複雑に伸びている
峯山山頂を始め、今は開けて見晴らしがよくなっているところは、以前はみんなこういう具合にびっしりと覆った篠竹の頭越しにようやく花を眺めていたものだ
このトンネルを抜けると下界である
笹薮の中からヤマザクラを思わせるモミジイチゴが枝を伸ばして花を咲かせている