平方録

「閉所」で思うこと

武蔵小杉まで出かけて行って脳のMRIと動脈硬化の度合いを調べるべく、検査を受けてきた。
武蔵小杉に意味はなく、たまたまそこの病院に在籍しているU先生に脳内の健康維持を委ねているからである。

16年前の春、青天のへきれきの如く脳の中に直径7ミリを超す未破裂の動脈瘤が見つかり、ちょうど今頃の季節に開頭手術を受けて処置を施すことに成功し、現在に至っているのだが、動脈瘤を見つけてくれた女医さんが本当の意味の主治医なのだが、この女医さんがあろうことか外務省の医務官試験に合格してしまって日本を去ってしまったのである。
現在、某国の首都にある日本大使館に勤務していて、主治医の役割を果たすことが不可能なのである。
そのため、代わりになる先生として紹介されたのがU先生なのだ。
脳血管内治療の日本におけるエキスパートの一人である。
雑誌などで名医を紹介する特集が組まれることが時たまあるが、そういう時には必ず顔写真付きで紹介されるような先生である。

頸動脈のエコー検査は20分弱かかる。首筋にゼリーの塗られたローラーを当てて、ゴリゴリ押しつけると頸動脈内の動脈硬化の程度が分かるんだそうである。
ここ数年のチェックでは若干プラークの堆積は見られるものの、年相応の全く心配ない程度のもので推移してきている。
MRIの検査にも15分超かかる。
こちらは狭い空間に上半身を差しこみ、頭を動かさずにじっとしているのだが、頭のすぐ近くで金属製のバケツやらヤカン、鐘などガンガン音の出るものを持ってきて、思いっきり叩いているような、すざまじい騒音に攻め立てられるのである。
おまけに極めて狭いところに頭を突っ込んでいるわけだから、閉所恐怖症の人には耐えられない検査らしいが、私はなぜか、意識して目を開けたことが一度もないので、その恐怖からはまぬかれているのである。

で、出来ることなら楽しいことを考えて過ごしたいのだが、あの騒音の中ではとても無理で、逆に不愉快極まりないことや、心に負った傷などを呼び覚ましてきてなぞっていると、あっという間に時が過ぎるという寸法なのだ。
この日の検査も、えっ、もう? というくらいあっけなく終了したんである。端折ったんじゃないのと思えるほどで、それだけ考えごとに集中出来たおかげなのである。
われながらヘンな集中力がついたものである。

在外公館に去ってしまった主治医は日本にいるとき、患者の側に立って病院内の不正を暴いてしまったため、いろいろ意地悪された挙句、医療の現場から遠ざけられる仕打ちを受け、嫌気がさして転身の道を選んでしまったのだ。
当時注目を浴びていた若手政治家が態度を翻していじめと意地悪を繰り返したんである。
今その政治家は石もて追われるごとく職を捨て姿を消したが、ほとぼりが冷めたとでも思ったのか、大阪辺りの政党から衆院の比例区で出馬し、一応議員には戻ったようだが、地盤を持たない議員である。存在そのものがバブルのようなもので、往時の面影はまったくない。
底が割れてしまったのだ。誠意を尽くさず、好き放題のことをしている政治家というのは、結局のところ見透かされ、見放される格好の例である。
しかし、そんな程度の奴に、ひっかきまわされてしまったという事が、返す返すも残念である。
いろいろと出来る範囲で手を打って見たつもりだが、結局、力にはなれなかったのである。
一緒になって妨害してきた別の一人は、退職とほぼ同時に病死してしまった。
因果応報ってやつなのか、恐ろしい話である。

武蔵小杉まで通う度に、そういうちょっぴり苦い思いが浮かんでくるのである。


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