口の先から尻尾の端までの体長が24、5センチもある立派なものである。
ピッチピチのサバやきれいな衣装をまとったホウボウ、アオアジ、イカなどと一緒に並んでいて、特にサバとホウボウには強く引かれたがメバルはいつもあるわけでもないという点が決め手となって買い求めた。
2匹セットでザルに並んでいて、ひとザル600円だったからソコソコの値段と言える。
頭に思い浮かべた調理法は煮付けだ。
魚の食べ方で一番美味しいのはやはり何と言っても刺身でそのまま食べるのが最上だと思うが、メバルやカレイのような淡白な白身の魚を煮付けにするのも悪くはない。
わが家ではたまにキンメダイの切り身の煮付けが登場したりして、これはこれで大変においしいのだが、1匹丸ごとの魚を煮付けて食べるのは稀である。
そんなわけだからメバルを目にして、ぜひ煮付けで食べたいと思ったのだ。
わが家は総じて味付けが薄いから素材そのものの味が引き立つのだ。
そうでもしない限りもともと淡白な白身魚の身が持っている甘味や旨味など感じ取ることは不可能で、何のための煮付けかと言うことになってしまう。
旬の素材を口にする場合は素材そのものを味わうのが一番で、そのためには味付けは出来るだけ目立たないようにするのが自然に対する礼儀でもあるのだ。
甘いものが欲しければ砂糖を舐め、みりんを飲めばいいのだ。
こういう新鮮な魚を楽しむ場合は場合、合わせる酒は冷酒かぬる燗辺りと一緒にやれば至福の夕食となるはずだが、あいにく日本酒が切れてしまっていて赤ワインと芋焼酎とシングルモルトのウイスキーしかなかった。
正月に飲んでしまった分を補給していなかったのだ。
仕方なく芋焼酎の「三岳」をお湯割りにしてみたが、ちょっとこれは失敗だった。まだロックの方が良かったかもしれない。
白ワインでもあれば何とかなったのだろうが、赤の常備はあっても白はないのだ。
新鮮な魚の不意の来訪に備えて白ワインの常備も必要だと言うことを痛感した。画竜点睛を欠いた気分である。
メバルという名前は目が大きくてぱっちりしていて「目が張っている」という理由からの命名らしい。
確かに皿の上に乗った煮付け姿をまじまじと見ると、その大きな目は印象的である。
画竜点睛もまさに目のことを言っているのだ。
きれいなオネエサンにきれいで透き通った目でにっこり微笑まれでもしたらボクなんてイチコロでノックアウトされちゃうからね。
しかも、こいつは「春告魚」という何とも風雅な別名を奉られているんだね。
食卓にお招きするにふさわしいお方と言うことになりますナ。
煮魚以外にも三枚におろした身を皮をはがずに、皮の部分に焦げ目がつくくらいに炙って刺身にして食べるとイケルらしい。
本格的な春がやってくるまでには一度ならずメバルさまにお目にかかるチャンスが巡ってくることだろう。その時はこの「火取り」という方法で食べてみたいと思う。
3月になればシラス漁も解禁されるし、これからどんどんにぎやかになっていくのが待ち遠しい。
ゴボウとレンコンと一緒に煮つけた「春告魚」。大きな目がチャーミングなのだ
魚屋の張り紙。イカ刺しよお前もかの気分がして面倒な世の中になったものだが、イカソーメンのように細切りにすればアニちゃんもちょん切れるはずだ
カツラの木の下のスイセンの花数が増えてきた
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