寒冷アレルギーってやつで、いったんこいつに襲われると尋常なことではくしゃみも鼻水も止まらない。
苦しくなって口を開けたままくしゃみすれば、時速数十キロで飛び出すしぶきは周囲に霧となって漂うからハタ迷惑この上ない。
じゅるじゅると垂れさがる鼻水は街頭でもらうポケットティッシュをあっという間に使い切ってしまうから、仕方なくハンカチで鼻水を処理することになる。
汚らしい話だが、そのハンカチだってすぐに濡れてぐっしょりしてくるし、そうなるとトイレの後などに手をふこうにも乾いたところが無くなってしまうのだから、ハンカチとしての本来の用をなさなくなってしまう。
第一そんな状態のハンカチで手を拭こうものなら手に鼻水を塗りたくるようなもので、そんなこと出来るわけがないのだ。
現に今朝もぬくぬくしたベッドの中で4時のNHKニュースをラジオで聞いた後に床を離れたが、パソコンの前は17度あるとはいえ、温かな空気に慣れ親しんだ体には到底受け入れ難く、しばらくすると苦沙弥先生がやってきてちょっかいを出す。
こうなるとまだ寝静まったままの夜明け前の暗がりの中で、わずかにパソコンの光と小さなLED電球に照らされた老境の男がハッ、ハッ、ハッ、ハァ~クションッ! と虚空に向かってしぶきをまき散らすことになる。
ボクは今朝もまたブログを書こうとして起きてきたのであって、空気中にしぶきをまき散らすために起きてきたわけではないのだ。
連日の雨で部屋の中の湿度だって高いのだから、わざわざしぶきを撒いて部屋を湿らす必要はないのだ。
あいつの苗字は確か珍野だったか。まさか鼻をかむ時の擬音を持ってきたわけじゃあるまいね、漱石先生? ま、そんなことはどうでもいいか。
さて、前置きばかりが長くなったが、ここからが本題。
こういう苦沙弥先生の突然の訪問への対処法というものが、あるにはあるのである。
本当は居留守を決め込むのが一番いいのだが、なぜか件の先生には通用しない。
そこで登場するのがウイスキーなんである。
苦沙弥先生は玄関に入るや否やずかずかと上がり込んできてドッカとソファーに坐り込んでしまうわけだが、茶の代わりに小さなショットグラスにウイスキーを注いで持っていくのである。
すると先生はこれを舐めるようにちびちび飲むんである。
どうやら口蓋の上部分の鼻の穴に直結した、粘膜が露出しているような部分にウイスキーを擦り付けるようにして喉の奥へと流し込んでいるようなのだ。
粘膜を洗っているという見方もできるのだ。
実に妙ちくりんな、先生の苗字にたがわない行為なのだが、案外これが効くんである。
最初のひと口でざらついていた粘膜は滑らかになり、それにつれてムズムズの元凶である粘膜ヒダの収縮の度合いも小さくなっていくんである。
小さなショットグラスではあるが、これが空になるころには一旦「撃ち方止め」になり、邪魔したナとか言いながら苦沙弥先生は帰っていくのである。
このままならヤレヤレなのだが、慌て者というのか人恋しいのか、先生は忘れ物をしたとかなんとか言っては舞い戻ることが少なくないのである。
そうなるとまた小さなショットグラスの登場で、これを3、4度と繰り返していると、こちらもすっかり体がほてってしまい、ア~ラァヨッってな気分になってしまう。
そうならない前に何とか対処するのが肝心なんである。
ボクの現役時代の職場は酒屋でもないのに、ありとあらゆる種類の酒瓶がごろごろ転がっているようなところで、しかも大っぴらに飲みさえしなければ昼間だって少々口をうがいしても文句を言われないような所だったのだ。
上司に見つかっても、フム、気付け薬か? で終わりだったのである。
思えば天国のような環境であったとしか言いようがない。
ま、という訳で今朝も苦沙弥先生はご挨拶に見えられたのだが、早々にお帰りになったのである。
ア~ラヨッと。
もう4日間も雨にたたられている。今朝もまだ雨が降り続いている。青空が見たい。手足を精いっぱい伸ばしたい…。で、わが心に刻まれた風景を。
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事