山形の友人が「田舎育ちも湘南の風に当てれば化けるかもしれないぞ」と庭で採れた渋柿を送ってくれたのだ。
その渋柿の皮を奇麗に剥いてヘタの部分に残された枝の一部に紐を括り付けてぶら下げ、柿すだれを作ったのが15日のことである。
去年に続いて2度目だが、去年はどういうわけか吊るした柿のほとんど全部と言ってよいくらいに黒っぽいカビがついてしまって、さすがに口にすることははばかられ、涙をのんだのだ。
意地汚いボクはカビの被害が軽微なやつを選んで口にしてみたら、それは干し柿特有の凝縮された上品な甘さを湛えた見事な逸品に仕上がっていて、巷でよくおいしく出来上がった干し柿を高級和菓子に例えて礼賛するが、人の手を経た菓子なんぞと比べる不遜さを軽蔑しこそすれ、あぁ、山形と湘南が見事にコラボしたなと感じ入り、自然の作り上げるものにかなう人工物は金輪際ないのだと思ったものだが、これは逃した魚が大きいのと同じ類の話かもしれない。
逃げた魚をもう一度とらえたい。
そういう2年がかりの気持ちを込めてぶら下げた柿すだれなんである。
ところが、ぶら下げておいた柿の数個が鳥に突かれ、気が付いたら皮をむいてあるのに外側の部分だけを残し、内側を奇麗にくりぬいて食べ尽くしていたんである。
柿の下部分からほじくっているので、外側だけ見たんでは被害に遭ったこと自体気が付きにくいのだ。
考えようによっては敵ながらあっぱれで、犯行現場をなるべく人目にさらさないように注意しているところなどはお見事というしかない。
もっとも、去年の教訓から鳥が狙ってくることは織り込み済みで、1個たりともやらね~ゾなんて意地悪するつもりはなくなく、まぁ2、3個はおすそ分けしてもいいからね、お行儀よく食べてね――くらいの気持ちは持っていたのだ。
ところが被害は2、3個にとどまらず、さらに拡大傾向を見せ始めた。
まだ犯行を現認していないが、去年のデンで行けば犯人はメジロとシジュウカラである。
一応、鳥よけに網はかぶせておいたのだが、網目が大きすぎたようだ。主にヒヨドリを防ごうと思ったからだが、メの字とシの字はちょっとやり過ぎである。
突きかけを木の枝にぶら下げておいたから、そっちに移ってもらいましょう。
テンモウカイカイソニシテモラサズってことわざがあるけど、あれも嘘だってことがバレちゃったなぁ。
ん? アベなんちゃらが「もりかけ疑惑」からも逃げおおせてるのが何よりの証拠ヨ。でしょ?
すごいねアベなんちゃらは。憲法蹂躙は朝メシ前、ン百年を経たことわざだって蹴散らかしちゃうんだから。
細かな目の網をかぶせたので柿すだれという優雅さは消え失せてしまった。風情も同様だ。
こういうところはちょっとがっかりなのだが、致し方ない。
山形の友人に話したら、山形は柿の木だらけで、人が手を出さない朱色の柿の実が秋の日に映えていて、鳥だって食べやしないんだと教えてくれた。
ふむ、彼我の差は大きいぞ。
こちらは鳥も人間もガッついているのだ。心せねば。お里が知れちゃいますナ。
メの字とシの字があれほどまで突きまわすんだからさぞかし甘く出来上がっていることだろう。
人間の場合はさらなる味の凝縮を待つのだ。急いてはいけないのだ。
カビの被害も出ていないゾ。この調子だ。
突きまわされ、内部を見事にくりぬかれた制作中の干し柿
かくしてメジロとシジュウカラもシャッタアウトすべくこんな無粋な姿に
メの字とシの字のために突きかけの柿を木の枝にぶら下げる
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