平方録

生シラスが泳いでいるのを「見て」きた

ぬくもりを感じさせる春雨とは違って、冷たいばかりの雨が朝から降っていた。おかげで「春支度、一旦停止!」みたいな号令がかかったように、春めき始めた周囲の自然は動物も植物も、すべて鳴りを潜めてしまってシーンと静まり返っている。
しょうがないなぁと思いつつ、午前中は新聞を丹念に読んだり、本を読んで過ごしていたが、昼ご飯を食べている最中から「一日中閉じ込められているわけにはいかないなぁ」と反発めいた気持ちが強くなり、寒いのはまっぴらだが、そんなことも言ってられやしないぞと「出かける!」という一念に固まっていった。

「水族館の年間パスポートはこういう日のためにあるのだ!」
水族館は江の島の手前にあるのだから、晴れていさえすれば歩いていける距離なのだが、用事で外出するという妻の車に近くまで便乗させてもらうことにした。
最近は世間とのズレが生じ始めてきているようで、時々こちらの想定とは違った結果を目にして「時代は変わったなぁ」などと嘆息することがちらほら出てきた。
ガラガラの館内を予想したのだが、薄暗い館内は若い男女のカップルで「超」こそつかないが行く先々の水槽の前に人垣ができて混みあっている。

なんだよこいつら平日の昼間っから、労働市場で汗かけよ、GDP上げろよ、アベなんちゃらを監視しろよ!って言いたいくらいなのだが、考えてみれば大学生はもう休みに入っている時期なのだ。
こういうカップルに交じって水槽を覗いていると「わぁ~、あの魚って鯉?」「わぁ~、泳いでるぅ~」などと言う会話が漏れ聞こえてくる。
こいつらバカか! 海の中にコイが泳いでいるものか。魚ってのはね、いつも泳いでるんですよ、歩いちゃいませんよ。
ったく低脳め、無知蒙昧め。日本ももうおしまいじゃ~あ、これまでじゃ~あ。アベなんちゃらや「否だ防衛大臣」が平然とウソをつきながら居直っていられる素地はこういうところにあったのだ。

笑い事じゃぁなくて、これが実相なんだろうと思う。目の前にあることを正しく捉えることができないし、ましてや理解するなんてことは別次元の、ありうべからざることなんである。
チ~ン! 合掌!って感じですな。

さて、海の話、相模湾の話に戻るとして…
おいしい魚が獲れるところというと、なんとなくイメージとして富山湾だと思っていた。
水深が900メートルもあって〝天然のいけす〟と形容されるほどに、ブリ、ホタルイカ、シロエビ、ベニズワイガニなどが名高いせいもある。
これに比して、わが相模の海は水深では駿河湾の2500メートルには及ばないものの第2位の1500メートルもあり、魚種も約1000種類という豊饒の海なんである。

富山湾の含めた「深い湾ベスト3」はいずれも日本列島を東西に分断しているフォッサマグナ上に位置しているのが特徴だそうだ。
駿河湾と相模湾はともに北米プレートとフィリピン海プレートがぶつかるところにあって、その衝突の影響で深い海が出来上がったわけだが、地震の巣でもあるのだ。
ありがたくもなんともないが、元禄と大正に発生した関東大地震はいずれも相模湾が震源地である。一方では東海地震が想定されている。
そのリスクのささやかな見返りが豊かな水産資源というわけだろうが、これは受け入れるしかないのだ。

新たに「シラスサイエンス」という展示コーナーができていて、世界初!というカタクチイワシの繁殖展示が見られた。
カタクチイワシの成魚がぐるぐる泳ぎ回る水槽、卵からふ化したばかりの赤ちゃんが浮いている水槽、われわれが口にする「生シラス」がそのままの格好で泳ぎまわっている水槽などがあって、これはもう「へぇ~」「ほぉ~」という思いで見ることができた。
シラス漁は数日前に解禁されたばかりで、初モノはまだ口にしていないが、この段階のシラスはふ化してから30日超の幼魚なんですナ。
展示は始まったばかりのようで、あまり注目を集めているようには見えなかったが、ボクにはとても興味深かった。
見方を変えると、シラスの養殖やってるってことでもあるんですよねぇ…

今度はもっと空いている時期・時間帯を狙って行ってみたい。
何しろ近いし、パスポートがあるし。



カタクチイワシの成魚の群れ


生シラス、で間違いないが、水族館では生後30日のイワシの稚魚・シラスという名がつけられている


こちらはわかりにくいが、生後20日ほどの稚魚
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