低い丘が続くその足元に沿って地形通りに曲がりくねって伸びている未舗装の1本の道。
丘の反対側は水田とビニールハウスが並んでいる鄙びた感じの道だが、散歩にはうってつけだし、用事があって出かける時も特段急いでいなければ、わざわざこの道を通る。
ここでは大都会と違って、冬と春の境ではいち早くオオイヌノフグリの透き通った青い花に出会えるし、青と言えばこれからの時期はツユクサの青が一層引き立つ時期を迎える。
ヤマザクラも何本かあって、密かな花見スポットであるし、終わったばかりだが百合の女王と呼ばれるヤマユリの艶やかな姿もまだ瞼にくっきりと残っている。
…と言う具合に、様々な季節の花がこの道沿いに見られるところなどは、まるで身近な植物園のようでもあり、この道を好む理由と言っていい。
都会暮らしの身には、どこか懐かしい地方の景色を彷彿させてくれる存在でもある。
茅葺屋根の家も残っていて、大船に松竹撮影所が健在だった頃は時代劇の撮影にしばしば使われたというのも、さもあらんとナットクするのである。
ヤマユリが咲き終わって心の中にぽっかり穴が開いたような気がしていたが、今度はヤマユリが咲いていた直ぐ脇で赤紫色の花穂が揺れているのに気付いた。
ハギかしらん…と思ったが、垂れ下がって咲くハギに対して、花穂をまっすぐ空に向けていて違うようである。
毎年見かける花で〇〇レンズで調べてみると、確かめるたびに変わるので判然としないが、タイワンコマツナギあたりらしい。
昔はインディゴ染料として重宝したらしいが、今は化学製品にとって代わられ出番はほとんどないらしい。
手の届かない崖地の上の方でたくさん咲いていて、これまで気がつかなかったのが不思議なくらいだ。
ヤマユリばかりに目を奪われていたということもあるにはある。
が、それにしたって…
ニンゲンの目なんてそんなものさ、と言われればそれまでだが、ぼんやり歩いている証拠だろうか。
崖地のそこそこの面積に広がって咲いている
蒸し暑さが募り始めたこの季節に、何となく涼やかさを感じさせてくれもする
花穂はツンと天を指している
葉にも特徴がある
花穂の下部には咲き終わった花がさやのようなものを作ってタネを宿している