近所にニセアカシアの繁る一角があって、この時期にその下を貫いて通っている道をたどっていくと独特の甘い香りに包まれる。
蜜を求めてハチの仲間や小さな虫たちが高い枝先の花に群がっていて、その羽音が耳元まで聞こえてくるようだ。
何せ木の本数が多い上に、1本1本の木が付ける花の数は膨大で、もうむせかえるような香である。
この塩梅なら、ここ辺りの地形や普段の様子を熟知している人なら、どんなに真っ暗闇の夜でも、この下を通りかかれば「あぁ、今あの辺りに差し掛かったな」ということが、目に見えなくともすぐに分かるだろう。
あれだけの香りの充満には、普段滅多に出会えるものではない。
そんなわけであの甘い香りに満ちたあの場所を通るたびに、何かまだ知らない未知の物が現れて、誘惑でもしてくれないかな…罠でもいい…、何か仕掛けてくれないかな…と期待するのだが、今のところ何も起きていない。
昨日の夕飯時に、録画しておいたNHKの「新日本紀行」という番組の「鎌倉早春スケッチ」という番組を見た。
ビックリしたことに、ボクの家から百数十メートルしか離れていない茅葺農家の〇〇さん宅が出てきて、ここら辺ではちょっと有名なおかみさんが明るく元気な姿で登場していた。
初めて知ったのだが、家の裏手には「横井戸」と呼ばれる山腹を30mも掘り抜いた井戸代わりの洞窟があって、今も水が湧き出して流れているし、洞窟の冷気を利用して野菜の貯蔵庫代わりにしいることも知った。
カマドも現役で、今でも煮炊きにこれを使うのだと「有名なアケミさん」はコロコロと笑いながら説明してくれるのである。
そして、ボクが何気なく通り過ぎているお稲荷さんが田んぼの奥の山懐の一段高いところにあるのだが、アケミさん夫婦は赤飯を炊いて藁づとに包み、イワシの干物と(もう一つは忘れちゃった)を持って、夜中にお稲荷さんのところまで行ってお供えをするという行事を続けているんだそうな。
昼間、アケミさんの亭主が採っていたいたタケノコはボクんちのすぐ近くの竹藪からだったし、結局無人スタンドで買って食べているタケノコは地産地消そのもの‶目の前のタケノコ〟だったのだ。
ボクはまだここに移り住んで40数年にしかならないが、アケミさん宅は鎌倉幕府が開かれたころには、既に暮らし始めていたんじゃないだろうか。
娘がここの娘さんと同級生だったが、同じクラスになったことは1度もないらしく、付き合いがないのがちょっと残念。
ボクは「地の人たち」との交流って嫌いじゃないんだけど…
ニセアカシアの道
サクラのように枝の隅々まで花が咲く そしてサクラにはない良い香りを持つ
頭上を覆いかぶさって咲いているから、口を開けて立っていれば、ひょっとしたら蜜つのしずくが垂れて口中に落ちてくるかもよ ♪
ブドウなら鈴なりってところ…
風で枝が少し動くだけで、匂いがまき散らされる…
食べられるといいんだがなぁ
目撃はしたことないけど、メジロなどの小さな鳥もこの蜜を好むんだろうな
細かな霧雨が静かに落ちてくるような時は空気の流れが止まって、匂いが拡散しないため、一層匂い立つようになるんだろう ♪