平方録

ジイサンバアサンたちが背中で語っていることは…

ボクのパトロール範囲の外にある大型スーパーに初めて立ち寄っての話である。

そこはミニデパートみたいな大きな施設で、3階にあるおもちゃ売り場を覗いたところ、一角に置かれたゲームコーナーの前を通りかかって足が止まってしまった。
異様な光景を見てしまったのである。
ん! なんだありゃぁ? とその光景を確かめるべく、吸い寄せられたんである。
クレーンゲームとかレーシングカーの運転ゲーム機とかサッカー盤などが所狭しと並んでいるおなじみのコーナーで、時刻は午後の2時過ぎのこと。

おそらくこの日は小中学校の終業式だったらしく、大きな荷物をたくさん抱えて下校してくる小学生の姿を何人も目撃していた。
したがって、出足の良い子供たちが家に荷物を置いた後、早速ゲームコーナーにやってきていたのである。
そういう子供たちに交じって、というか、ボクの目には「押しのけて」という表現の方がぴったりだと思うのだが、どう見たってボクと同年代かそれ以上に年を取った男女がゲーム機に取りついて動かないんである。夢中になっているのだ。その数十数人⁈

何がそんなに面白くてたかっているのかと、しばらく観察していたが、どうにもよく分からない。
というのは、スリルがありそうでもなく、一定のワザが必要とも思えず、ただのんびりと、中にはせわしなく、金属製のメダルをゲーム機に投入しているだけなのだ。
そんなことを繰り返しているうちに、時々、投入したメダルがジャラジャラと手元に流れ落ちてきて、手元の受け皿では受けきれなくなって小さなバケツを幾つか並べているご仁もいるんである。
もちろん、メダルを吸い取られるだけの人もいて、そういうご仁は再びメダルを買いに自動販売機に行くのである。どこでも共通する光景である。

「メダルは何か景品にでも変えてもらえるのか」とゲームコーナーの従業員に聞いたら「ただ遊ぶだけです」という。
景品に変えてもくれないのだから、射幸心をあおっているわけではないのだ。
ふむ、じゃぁ何が楽しくてこのジイサンバアサンたちはゲーム機から離れようとしないのであるか。
確かめてみようにもゲーム機が空かないんだから、確かめようもない。それくらい熱中しているんである。

メダルの購入はどうも千円単位のようである。
1000円で120枚。でも「メダル増量キャンペーン中」という張り紙があって、1100円だと300枚なんだそうである。
たった100円の差で200枚も上乗せされているのだ。
もしかしたらこれがジイサンバアサンを夢中にさせている要因なんだろうか……

それにしたって、やらずぶったくりみたいな商売じゃないの。
機械を置いて、いじらせるだけでお金を吸い取るんである。お金のバキューム機械みたいですナ。2、3台欲しいね。
何か魅力的なリターンがあるのならいざ知らず、時間つぶしのためだけに1100円をむざむざ捨てるようなものじゃないですかい。
そうか! このジイサンバアサンたちは時間を買っているってことなんだろうか。

何だか背中から孤独感が立ち上ってくるようじゃぁありませんか。
匂い立つ加齢臭……放置すれば腐臭を放ち始めそうな孤独臭……
何か、見てはいけないようなものを見てしまったと言ってはオーバーだけど、あまり見たくない光景ではありました。
ピークに差し掛かりつつある高齢社会の一つの断面が、大型スーパーの一角に出現しているのである。

パチンコ屋にも似たような景色は存在するんだろうけど、あれは射幸心をあおる閉鎖空間の中の光景であって、しかしこちらはそうじゃないのだ。
子どもたちの目にはどう映ってるんだろうねぇ。



あるところのゲームコーナーでは子どもたちを駆逐して年輪を重ねたご仁たちがゲームに興じていた


「ピカキッズ」という名称からしたって、そもそもの想定は子供たちである


24日から3日間が「メダル増量キャンペーン」期間
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