平方録

枝垂桜はまだだったぁ~

昼ご飯を済ませた後、妻とぶらぶら歩いて扇湖山荘へ。

今も売られているらしいけれど、ボクが子どものころ、つまり今から5、60年前に胃腸薬と言えばピンとくるような大衆薬を売っていた会社の社長が財を成し、趣向を凝らして海を見下ろす丘の上に建てた別荘が地元自治体に寄付され、春と秋の2回、2日間づつのごく短期間だが、一般公開されているのだ。
一般公開は今年で4、5年目になるはずである。
ボクは2014年の秋の公開に足を運んだのが最初だから3年ぶりである。

わが海沿いの街では紅葉が始まるのが11月の下旬から12月初旬にかけてと遅い。秋の公開はこの紅葉の時期に合わせるので、ボクが訪れたのは師走直前の11月29日ころだったと思う。
山荘内にはモミジやイチョウなどの落葉樹が多く茂り、赤や黄色に染まった落ち葉がとてもきれいだった記憶がある。
その時に、邸の正面の庭に植えられた枝垂桜の巨木が満開の花を咲かせた姿は得も言われぬ美しさだと教えられ、次の機会にはぜひそのあでやかな姿を見てみたいものだと心に刻んでおいたのだ。

枝垂桜のビューポイントには満開になったときの写真が掲示されていて、平成25年3月26日と記されていた。
まさに同じ時期なのだが、目に入る巨木の枝は遠目には冬の姿そのものであり、花が咲く気配は感じられないままである。
今冬は去年11月24日に記録的な早さで積雪を観測して以降、暖かい日々があるにはあったが、総じて寒い冬だったせいだろう。
一輪も咲いていないのだから、春の訪れは遅いというべきで、楽しみにして行ったのだが、とてもがっかりした。

というわけで、広い敷地のあちこちでタチツボスミレやフキノトウの群落にはお目にかかったが、春らしい装いの庭とは言い難く、曇りがちだったせいもあって寒々とした公開だったのだ。
これで花がなくても新緑でも萌え出ていればまた随分と雰囲気も違ってくるのだろうが、それもないし、そういう堀辰雄が喜ぶような清明な季節にはこの街の役人は率先して休みたがるので、公開の予定はないんである。
せめて口先だけでもいいから「市民ファースト」と言ってみてくれないか。

わが街には、この扇湖山荘をはじめとして、大金持ちやら企業やらが市民の皆さんのために役立ててと、寄贈してくれた邸や広い土地がいくつかあるのだが、寄付者の意思に沿って上手に活用されているのかと言えば、少々疑問に思わざるを得ない。
扇湖山荘からも見える北側の山腹には大手のシンクタンクが構えていた瀟洒な建物と広大な敷地が寄付されて十数年になるが、建物は荒れるに任され、今や幽霊ビルのような佇まいである。
加賀百万石の前田家から寄贈された邸こそ文学館として活用されているが、これなどは稀有な例と言ってよく、総じて利活用にはもう少し知恵を働かせてもらいたいと思っている市民はボク1人ではあるまい。

前にも書いたことがあるが、残された木々が生い茂る貴重な自然をフェンスで囲ってしまい、午前8時半から午後5時15分までしか開けず、年末年始はすっかり門扉を閉ざして市民を締め出してしまうような街である。
何とかもう少し市民の方を向くようであってほしいと思うのだが、パブリックサーバントとは正反対の積年の悪弊が身に染みてしまっているのだろう、一向に改まらないんである。

市民の無関心をよそに世界遺産登録に血道をあげているようだが、門前払いが続いている。隗より始めよと言いたいのだが、何も分かっちゃいないんである。



茶室伏見亭。手前の木はモミジの巨木


伏見亭から本邸へ向かう橋の上から眺める正門


橋を渡ったところから続く竹林


飛騨高山の民家を移築して手を加えたという本邸


枝垂桜の巨木


本邸から相模湾を望む


本邸の内部
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「随筆」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事