「関の孫六」で知られ、刀剣作りで名高い関に着いたのが正午過ぎ。まずは腹ごしらえと鰻屋に入る。
関は鰻屋が多いそうだ。これにはわけがあって、温度の高い火を扱い、しかも金槌を力一杯振って鋼を鍛える刀鍛冶たちにとって体力維持は必須のことで、栄養価も考えると鰻は格好の食べ物なんだそうである。
肉体労働のエネルギー源としての鰻だから、出てくるのは気取らない丼である。
地理的には関西に近く、蒸さずに直接焼く食べ方である。
関東の、というより江戸の食べ方は鰻を一旦蒸した後、炭火で焼いていくから舌に乗せれば溶けてしまうような柔らかな食感である。
これに対して関西風は皮はパリッとしているし、全体的にしっかりした歯ごたえが特徴で、香ばしさも際立つ。
好みの分かれるところだろうが、悪くはない。おいしかった、
数ヶ月振りのウ・ナ・ギであった。
関鍛冶伝承館を訪ねたが、それにしても名刀と言われる日本刀というのは、つくづく怪しくも美しい光を放つものだということを実感させられた。
せっかくだからと、小ぶりの出刃包丁を手に入れた。親指の爪に刃を当てたところ、スッと切れるほどの切れ味が気に入ったのである。
「うだつ」のある街並みで名高いという美濃市に寄り道。晴れ渡って32度にもなる暑さの中を歩いたせいか喉が渇き、水分補給に入った店で「わらび氷」というかき氷に目がいって注文したら、きな粉とわらび餅が乗っていて、これがとびきりと言って良いくらいおいしかった。
氷の奥にアイスクリームに包まれたあんこまで入っていたのは驚きである。
夕暮れは金華山の頂上にそびえる岐阜城直下の長良川で鵜飼い見物。
西の空には三日月がかかり、豪華な2段重ねの折り詰め弁当を肴に地酒を舐め舐め川風に身を預け…極楽極楽でありました。
鵜飼いそのものは愛媛の大洲以来2度目。
彼の地のそれは周囲を囲む山が屏風のように迫り、辺り一帯に灯りが少なかったせいか、幽玄という言葉も当てはまるような雰囲気の中で行われ、素朴さを感じさせるものだった。
それに比べて川幅も広く、周囲の開けた場所に5ハイもの鵜匠舟が出て、その周りを数十隻もの見物船が取り巻く長良川の鵜飼いは賑やかなものである。
それにしても、よくぞあの手間暇かける漁法が連綿と続いてきたものである。
その辺の理由については聴き漏らした。
かくして、満腹と眼福の初日は過ぎていった。
ジャ~ン ! 刀鍛冶御用達、甘いタレと歯ごたえが特徴の関名物の鰻丼
美濃市のうだつの街並み
万が一の火災の火の手を防ぐ目的で作られた「うだつ」。お金があるほど立派なうだつが作られたことから「うだつが上がる」などと、出世を表現する言葉としても使われてきた
絶品「わらび氷」
金華山山頂の岐阜城
船中の豪華2段重ね弁当
3枚目には鵜が鮎を吐き出させられているところが写っている
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