平方録

生シラスやぁ~い

相模湾のシラス漁が解禁されて2日目の昨日、まだ獲れてはいないだろうとは思いつつも、自分の目で確かめるために境川河口にある網元に寄って見た。

案の定で、店で確かめるまでもなく、網元の漁船は店の裏手の川に係留されたままだし、漁師らしい3人が手持ち無沙汰にタバコをふかしながら談笑中である。
船をつないでいるすぐ脇の店の中はガランとしていて、漁獲があれば釜上げシラスを茹でる作業に忙しく立ち働く従業員の姿も見えない。
この様子では聞くまでもないと、そのまま自転車で通り過ぎたが、これも想定内で春先はいつだって獲れないのだ。

獲れないと分かっていても確かめるというのは、やはり初モノという言葉の持つ〝魔力〟だろうか。
あんなちっぽけな生き物に魔力があるかどうかの問題ではなく、言葉としての「初モノ」にそれがあると捉えると理解がしやすいかもしれない。
江戸っ子がカミさんを質に入れてまで口にしたと粋がる初ガツオだって、しょっちゅう獲れ出したらそこまでの必要もなくなる。
しかし質草なるようなカミさんを持っているってことがうらやましい。

まぁ、ともあれ、解禁された直後に初めて揚がったピッチピチの生のシラスを酢醤油に軽く触れて、冷えた日本酒をキュッとあおりながら食べる時の幸福感はやっぱり早春の喜びの代表格のようなもので、ボクにとっては欠かすことのできない味なのだ。

話はまた戻ってシラスの話。
解禁日に獲れないのはもう常識のようなもので、解禁日どころか一昨年は5月の大型連休頃になってようやく獲れ出すというくらいに出足が遅く、ヤキモキさせられたものだった。
漁師だってシラス料理で食べている店だって大打撃だったろう。
相模湾の水温やら湾内に暖かな黒潮が流れ込むかどうかなどという海況の変化をもろに受けるのがシラス漁なのだ。

県の水産センターは公式には明らかにしていないが、さる網元のホームページによるとセンターの調査結果では(1)3月に入って早々に行った試験操業ではシラスの反応はなかった(2)相模湾内の表面水温は14度台が広がっていてシラスの来遊・滞留条件として悪くない(3)マイワシの産卵親魚は利島、三宅島付近にかなり多く集群していると思われる――などとしているそうだから、少なくとも今年は5月までお預けを食らわされるようなことはなさそうである。

すでにわが家の庭に出てきたフキノトウを味噌で和えたフキ味噌は味わったし、近所の野原ではツクシも顔を出し始めた。
ノビルは食べ過ぎると腹を下すが、ほどほどなら味噌をつけて生でかじると、エシャロットを生でかじるよりもっと野性味に富んだ独特の味と香りが口中に広がる。こいつも近所の畑の土手に生えてくるころである。
そしてタラの芽とかワラビとか様々な山菜へと楽しみが繋がっていく。

それにつけてもまずはシラスだなぁ。







水ぬるむ=いずれも江ノ島で
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