3、4日前の話になるが、夕方近くピンポンが鳴るからインターホンに出ると男の声で「近所のお宅に修理に伺っている職人ですが」と前置きして「お宅の屋根のことで…」と言って話を切った。
それだけじゃ何のこっちゃで、「それで?」と続きを促すが、沈黙したままである。
言わないならさっさと帰れ、と追い返そうと思ったが、話だけは聞いてみようかという気になり、外に出ると職人風の若い男が立っている。
こういう話だった。
「お宅の屋根の一部が浮き上がっています。留め金とかの不具合かもしれません。ひどくなるとパタパタして、強い風が吹くと飛ばされてしまう危険があります。…で、親方が、多分あの家の住人は知らないだろうから教えてあげて来い、と言われました」
「ああそう、それはご親切に」と当方。
「ところで屋根のどのあたり?」と聞くと、少し離れたところまでボクを連れて行き、さも「見えませんか?」と言わんばかりに2階の屋根を指さし、「地面と平行に伸びている屋根と斜めになった屋根が合わさる部分を抑えている板状の部分ですよ」という。
遠くてよく分からないうえに、そんなにズレてパカパカするくらいなら、とっくに雨漏りがしているだろうに、変な話だなと思った。
それで「そりゃぁわざわざ知らせてくれてありがとうな。親方によろしく言ってくれ」と言ってお引き取り願った。
その際「ところで、君はどこの家に修理に来ているの?」と聞くと、話を逸らして、じゃぁと言って帰って行ったのだった。
それから5分もしないうちにまたピンポンが鳴った。
出て見ると先ほどの若い男で「言い忘れたことがある」という。
なんだよ七面倒くさい男だなぁと思いつつ外に出て応対すると、「明日も修理に来るので何ならついでに修理してもいいですって親方が言っていますが…」と修理の押し売りをしようという魂胆らしい。
「いいよ、わが家のメンテはメーカーにやらせてるから。この家の建設単価はよそのメーカーと比べると少し割高なんだ。それなのにパカパカ外れるような工事をしたんだったらタダじゃおかない。メーカーにきちんと修理させるから」といって、追い返した。
一応念のため、直ぐにメーカーの窓口に問い合わせ、点検を依頼すると「それは詐欺の可能性があります。最近、被害に遭う方が増えています。念のためどこの家に修理に来ているか確かめてもらえませんか」というので、「聞いたよ。聞いたけど曖昧にはぐらかした」と言うと「極めて怪しいです」と。
で、屋根の写真を撮って送ってくれれば本物の修理業者に見せて破損があるか調べるというので、スマホで撮った写真を送ると翌日返事があり、「異常らしきところは見当たりません」。
寅さんに言わせりゃ、「見上げたもんだよ屋根屋のフンドシ」って、屋根屋のそれは見上げる存在なんだがなぁ…
ひとり暮らしの老人だったりしたら、親切を装われてコロリとひっかかるかもしれない。
応急修理のつもりで頼んだが最後、法外な料金を吹っ掛けられることになるんだろう。
若い男の目をじっと覗き込みながら話を聞いたのだが、色彩こそ薄かったがきれいな目をしていた。
思い返してみると、確かに輝いてはいなかったなぁとも思う。
若い奴を騙して誘い込む悪人がいるんだよな。あいつ、痛い目に遭わないうちに足を洗えるといいのだが…
それにしてもウラシマソウってやつはキミョウキテレツな姿形をしている
見出し写真も含めて、近所の池と森の自然公園で撮影