時々自転車を漕ぐ目的は心肺機能の維持と足の筋力強化が主だが、これに加えて体中を隅々まで巡っている毛細血管の先まで新鮮な空気を怒り届けることで「心」のリフレッシュも図ろうという大事なエクササイズなのだ。
オゾンをたっぷり含んだ海辺の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込むだけで疲れ切った精神の解放が成ると言うのが持論である。
まぁ、つらつら思うに現役時代の何かにつけて押し寄せてくるストレスなどと言う厄介なものとは縁を切った身なので、そういう方面の精神の解放はそれほど必要なくなったが、ジジイになるとローカとかオトロエなどと言う文字が気になり始め、何とかこれに抗って若さを維持したいという欲望に駆られるのだ。
人類の歴史上、絶対権力の持ち主たちがその持てる力の限りを尽くしてもなお手に入れることが出来なかった「不老不死」を求めようというのではない。
ドライに考えれば部屋の中にタイヤを外した自転車を並べ、それにまたがってペダルを漕いだり、他の器具の助けも借りれば様々な筋力強化が出来るのかもしれないが、ボクはその方法を取らないというだけの話である。
何てったってタイヤの付いた自転車を漕げば目の前に展開する景色が次々に変化していくのだ ♪
さてお気に入りの海辺がダメならどの方角に進路を取るか。
いろいろ思いを巡らせた挙句、隣町にかろうじて開発をまぬかれてきている場所の谷戸の奥に瀬上池というため池があるの思い出した。
夏の日の午後、草いきれの中を歩き初めてこの池を見つけて石積みの堤防に立って眺めている時、ボクの鼻先をかすめるように何度も行き来して哨戒飛行するオニヤンマがいた。
そして何度目かの接近の折に、ひょいと指先で羽を挟みにいったら見事に成功したんである。
飛翔力抜群のあのオニヤンマを2本の指先で捕まえるなんて芸当は飛んでいるハエを箸で捕まえたという伝説を持つ塚原卜伝以来ではないか。ん? 宮本武蔵だったか?
池波正太郎がこの衝撃の事実を知ったなら、ボクのところに取材に来ていたやも知れぬ。
池波センセイは傑作小説を1本損したし、池波ファンも胸のすく剣豪小説1冊を失う結果となったことは重ね重ね残念なことであった。
あれはボクがまだ20代のころのことである。
結婚して間もないころで、今から40数年も前のロングロングアゴーの出来事であった。
その後ここ一帯の開発計画が持ち上がったが反対運動が起こって計画の実施はされていないが、至る所に開発予定地の看板が立てられていたから規模は縮小されても計画だけは生きているようである。
そして谷戸の奥、目の前に現れた瀬上池はほとんど昔と変わらない姿で残っていた。
ただ、オニヤンマが飛ぶにはまだ少し早すぎたようである。
大船に出てさらに北上し、環状4号線とJRが交差する辺りからイタチ川沿いの遊歩道を遡る。途中環状4号線に架かる「天神橋」。ここを取り上げたのは高校のサッカー部の1年先輩が越境入学でこの辺りからはるばる通ってきていて「田舎なんだよ」と照れ臭そうに話していたのを思い出した。半世紀も前は間違いなくド田舎だったはずである
天神橋から上流方向を見る
始めて走ったけれど、流域は緑が茂っていてなかなかの散歩道である
神奈中バスの本郷車庫付近でイタチ川と別れて細い流れに沿って進むとやがて深い谷戸の入り口に達する
自然の一部は残しますからね、という言い訳看板が目立つようになる
行き止まりと思しき広場に出ると階段が…
階段は短くて、上り切ると目の前にうっそうとした木立に包まれた池が現れる。40数年前には柵がなかったが広がる光景はほとんど変わっていない。オニヤンマを手づかみしたのもまさにこの場所である
この森は横浜の最高峰円海山に隣接し、鎌倉の天園ハイキングコースにもつながる広大な緑地の一角をなす貴重な緑なのだ
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