平方録

夜の帳をつんざいて時鳥

鳴いた、鳴いた!
聞いた、聞いた!

何をって? この時期はホトトギスでしょっ!
そう 目には青葉山時鳥初鰹
ホトトギスの初音を聞いたんですナ。今朝!

奇しくもというべきか昨日の夕飯のおかずにはカツオの刺身が出た。
カツオ自体はもうずいぶん早くから出回っているので何度も食べているが、句が詠まれた江戸時代にはホトトギスが鳴く頃にならないと湾の奥まで入り込んでこなかったから獲れなかったんだろう。
もちろん周囲に見えていた瑞々しい緑はすっかり濃さを増して青葉に成長している。そしてこの句の前書きには「鎌倉にて」とありますからね。
役者はそろっていたのだ。

ベランダのガラス戸を開けた際は空は曇っていて強い西寄りの風が吹いていた。
この時期特有のさわやかさはどこかに消えてしまっていて、嵐が近づいているような風雲急を告げるような塩梅の空模様だったのだ。
確かにイメージとしては合っているのかもしれない。

キョキョキョキョキョッ!

独特で甲高い、辺りの空気を強引に引き裂くような大音声といってよい鳴き声が響くのを確かに聞いた。

突然ですがご存じ小学唱歌。
♪ 卯の花の にほふ垣根に 時鳥 早も来鳴きて 忍音もらす 夏は来ぬ

この佐々木信綱の有名な歌詞の元になったと言われるのが永福門院の歌。

 ほととぎす空に声して卯の花の 垣根も白く月ぞ出でぬる

永福門院サンも信綱サンも良い歌を残してくれました。この歌もホトトギスのイメージづくりに一役買ってくれている。
ボクの家の庭のバラは真っ盛りだし、目に届く範囲の木々は生き生きした青葉に代わっている。
思いがけず長くて寒かった今年の冬が乗り切れたのも、この季節が必ずやって来る、じっと我慢さえしていれば「この」卯の花が咲きホトトギスの鳴く夏がやって来るのだと心待ちにしていたからである。
うん、確かに夏はやってきた! 間違いない!

この時期、午前4時を過ぎると空は急速に明るさを増していく。
「あれよあれよ」という形容詞がぴったりする速度で周囲の景色が浮かび上がってくるのだ。
あとひと月あまりで夏至なのだからそれも当然なのだが、天体の運行は何の遅滞もなく進んでいることの証明である。
ホトトギスもまた今年もやって来て自らの存在証明を発し、ついでに天体の運行の正常さも傍証したというわけなのだ。

 谺(こだま)して山ほととぎすほしいまま  杉田久女



まだまだ続くわが家のバラ













最後の1枚はようやくお目覚めの殿堂入りの名花「ニュー・ドーン」
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