平方録

恐るべし、相模線!

急に思い立ったんである。
「そうだ ! 相模線に乗ろう ! 」と。

年明け以降、寒さがつのっていたため、運動らしい運動をしていない。朝食後、きれいな青空に触発されて、ぼちぼち身体を動かしてこないとなぁと自転車での遠乗りを考えたが、天気予報はしきりに強風予報を発している。
寒い時期の強風なんて、自転車を漕ぐには最も不適である。
そこで頭をよぎったのが相模線なのである。

東海道線の茅ヶ崎から横浜線の橋本まで、全長33.3キロの単線である。
電化されたのが1991年のことだそうで、それ以前はディーゼルカーがブルブルと大きく車体を振動させながらのんびりと田んぼの中を走っていたものである。
県央方面に出かけた時など、わが家に戻るのに短絡線として便利で時々利用したものだが、単線だし、のんびり走るので、ともかく時間がかかった。
でもそれがまた逆に旅情というものを掻き立ててもいたんである。

元々相模川の砂利を運搬するために敷かれた路線だそうで、現在の相模鉄道が所有していたが、戦時中に国防上の理由から国に買収されたんだそうである。
砂利運搬を目的としていたから、当然のことながら相模川左岸に沿って線路は延びているが、川の流れは見えない。
しかし、沿線に高い建物もなく、視界の開けたところを走るので、沿線の西側の車窓からは富士山、箱根連山、そして丹沢山塊を間近に眺めることができ、景色は良いのだ。

今回急に思い立ったのも、その景色を眺めるのが目的の一つである。
駅弁などを買い込んで、カップ酒なんぞをちびりちびりやりつつ揺られて行きたいところだが、ボックス席はなく、車内は全部ベンチ式のシートが並んでいるだけなので、それがかなわないのが残念である。
人口密集地とはお世辞にも言えないが、一応首都圏を走る路線だけに、すべて4両編成の電車にはそれなりに客は乗っているのである。
まったくの赤字路線でもない気がする。

橋本駅は将来、リニア新幹線の駅が出来ることになっていて、今後はそれなりに利用者が増えるのではないか。
複線ということも視野に入ってくるかもしれない。
途中、倉見駅のところで東海道新幹線とも交差していて、県と地元自治体を中心に、ここに新駅を誘致しようという話が持ち上がり、一時は相当盛り上がってJR東海も京都・大阪間の新駅設置と同時進行で検討したが、リーマンショックを経て両方とも話は立ち消え状態のようである。

午前11時前の車内は比較的空いていて、屏風のように迫ってくる丹沢の山並みや真っ白な富士山を眺めるにはもってこいである。
丹沢は珍しく一部が雪化粧していて、北国の山里を行く路線のようでもある。
ドアもボタン式でローカル色あふれ、無人駅があることにも気付いた。
で、途中田んぼのど真ん中の無人駅に到着したので、思わず下車してしまった。

駅名を表示する看板もなく、あるのは金属製の四角い柱に小さく「入谷駅」と書かれているだけである。
しかも、もっと驚いたことには、駅の周辺にまったく人家はなく、飲み物の自動販売機がポツンとあるだけで、後は自転車置き場があったが、殺風景なものである。
失礼ながら過疎地のローカル線の駅前だってもう少し愛想があると思う。人のぬくもりというものがあるように思えるが…。
おそらく夜は真っ暗になるはずで、女性や子供が利用できる駅とは、とても言い難いものがある。

ちょっと辺りを散策してみたが、5分歩いても10分歩いても食堂はおろか、県道沿いに車の中古屋があっただけで、他には店の1軒も見つからなかった。
そう言えば、途中、寒川神社下車駅と書かれた無人駅周辺も、人家こそ立ち並んでいたものの、店らしきものは見当たらない。
明治5年に新橋・横浜間に鉄道が敷かれて以来、日本の町は駅と共に発展して行ったように理解しているが、この辺りではそれは通用しないらしい。
首都東京のすぐ隣、直線距離で5、60キロしか離れていないはずなのに、エアポケットさながらに、神奈川県にもこんなところがあるとは…、相模線、恐るべし !



走行中に撮ったら相模川を示す国交省の看板が写っていた。線路のすぐ脇を相模川が流れているようである。



せ~んろはつづくぅ~よぉ~♪




入谷駅前。駅名は小さな柱に書かれているのみ。



10分くらい歩くと住宅がそこそこ並んでいて、火の見櫓越しに雪の丹沢が迫り、「ここはどこ?」。
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