開業以来初めて利用したわけだけれど、まさか、こんな悲しいことのために利用するとは思わなかった。
通夜が滞りなく終わった後、柩を開けてくれたのでお別れしてきたのだが、フサフサだった髪の毛はなくなっていたし、目を閉じて化粧を施されているとはいえ、その表情から生前の面影を探すことは不可能だった。
痩せこけていたし、相当に激烈な闘病生活だったことがその姿から見て取れたのである。
思わず息をのむほどで、言葉も出ない。
この地方の風習なのか、お坊さんが退席すると参列者も解散になってしまったので、奥さんから最後の様子を聞くこともできなかったが、ガンは脳といわず骨と言わず、全身に転移して友人の体を蝕んでいたようだ。
その変わり果てた姿を見るにつけ、やりきれなさが募る。
いいやつだったのに、どうしてそれほどまでの苦痛に見舞われなければならなかったのか。
いかにも非情で、理不尽である。
全身に転移していたことは知っていたようだから、覚悟はできていたんだと思う。激烈な戦いを続けながらも、心は平らかだったんだと信じている。
お酒が好きだった。本当にもう一度、一緒に飲みたかった。
6月に予定を立てていて、宿も予約し、寸前まで行きながら断念のやむなきに至っていたのだ。仕切り直しできると信じていただけに、悲しくも悔しい。
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