暮も押し詰まったつい先日、しっかりした菓子箱に入ったカキが届いた。
山形の友人からで、箱のふたを開けてみると中にカキの実が数個、高級和菓子がそうであるようなギザギザの折り目の付いた"座布団"を敷いた上に行儀よく座っている。
友人宅には大きなカキの木があり、渋ガキなのだが、渋抜きをした後の実のおいしさはこれまで毎年送ってもらっていて折り紙付きだし、干し柿も送ってくれるのだが、これがまた京都の高級和菓子も尻尾を巻いて逃げ出すくらい上品な甘さの逸品に仕上がっていて見事である。
何よりボクはこの山形の友人夫妻手製の渋を抜いて甘くなったカキを「今際の際」(いまわのきわ)用に冷凍保存しているくらいなのだ。
今年も渋抜きガキと干しガキを送ってもらった。
そこに届いた菓子箱入りの座布団に行儀よく座ったカキを見れば?????という気分である。
電話で聞いてみると、何と人間は何の手も加えず、樹上で自然に熟したものだという。
つまりカキの木が自ら手作りした天然の熟柿♪
渋ガキの内は見向きもしなかった鳥たちも、甘さが増してくるのは分かるらしく、食べごろの実は必ずと言っていいほど突っつかれるらしいが、突っつかれていない実を選んで送ってくれたのだという。
このカキを食べることができるのは、庭にカキの木を持つヒトだけ。いわば究極の地産地消。
幾らなんでも、これは日本橋の千疋屋総本店でも売っていないぜっ♪
この手のカキを食べたければ、庭にカキの木を植えて8年待たなければならない。
あるいはカキの木を持つ友達のところに押しかけて、何粒か分けてもらうしかない。
届いたのはそういう逸品中の逸品と言っていい。しかも450kmもの距離をひとっ飛びしてきたフライイングパーシモンである♪
恥ずかしながら不肖平方録、樹上にあるうちに自然の力で自ら熟柿へと変貌を遂げた魅惑の食べ物を口にするのは今回が初めてである。
長生きしてよかった…♪
味? そりゃぁ聞くだけヤボってもんでござんしょう。
何せ、アルコールで渋抜きしただけのカキを今際の際用に保存しておくくらい気に入ってるんでござんすよ。
そのカキですぜっ。
1個を半分に割ってみたんですがね、果肉がきれいな熟柿色をしておりやしてね、しかもそれが透き通るようにきれいなんでごぜぇやすよ。
まるで〇〇の柔肌の如し、ってんでやんすかね。思わずうっとりさせられちまいましたよ♪
もちろん、上品な甘さと舌触りの滑らかさは何に喩えましょうや。筆舌に尽くしがたし…ってところでしょうか♪
ただね、超美人なのは間違いないんですがね、ひとつだけちょっと…
と申しますんはね、今年の果物全般に言えるのかもしれませんが、例年に比べると甘みの深さというか、濃度というか、そこがちょっと物足りねぇんでごぜぇやすよ。
友人に聞くと、友人もそう感じていたらしく、知り合いのカキ農家に確かめたところ、「夏の暑さが…」という答えが返ってきたとのこと。
詳しいメカニズムまでは不明ながら、「山形も異常なくらい暑かったから…」というのがカギになっているようでごぜぇやすよ。
この先どんなことになっちまうんでござんしょうねぇ…
こんな具合になっていたらしい(友人撮影)
まだ随分と実が残っている