鳴いた、鳴いた 。
聞いた、聞いた 。
初音を聞いた ♪
午前中から気温がぐんぐん上がり、今日こそはと耳をそばだてて散歩に出た。
前の日も20℃。ただし海から吹き付ける風がやたら強く、歩くのもうっとおしいほどで、こんな日にはさすがに鳴かないよなと思っていた通り、お預けを食わされていた。
昨日の午前中は風も弱かったのが幸いし、まさにポカポカ陽気。
こういう日に鳴かないでいつ鳴くの…今でしょっ!
隣町に住むブロ友さんも「今朝聞いた!」とホヤホヤの情報を書き記していたから、南関東の沿岸地方では昨日21日がウグイスの初鳴日だったようである。
去年は18日だったから3日遅れということになる。
ボクが耳にしたのはわが家からすぐ近くの孟宗竹の竹林の脇を歩いている最中で、竹林が終わりかけたところに隣り合う林の辺りから聞こえてきた。
最初は「ホォ~」だけ。
やや間が開いて「ホケ…ホケッ…」。
そこでまた一旦切れて「…ケッキョ」。
次の鳴き声を待って立ち止まり、意識を集中していると今度は「ホォ~…ホケ…ケケ…キョ…」。
前より長くつながったが、これもいまいち。
何せ、鳴き始めなのだから致し方ないが、この最初のたどたどしさも実に愛嬌があって楽しい。
初音を待ちわびる心というのは、春を待つという純粋な心とともに、このうまく鳴けないで焦っているウグイスの伊達男気取りを冷やかしつつ応援するという、密かな楽しみのことだと言っていい。
聞きながら思わず「それっ、頑張れっ!」「もう一息っ!」っと、合いの手のひとつも入れたくなる。
最初に聞いた場所から更に歩き、ひそかに「秘密の隠れ里」「桃源郷」と呼んでいる場所に差し掛かると、ここでもたどたどしくも澄み切ったウグイス特有の声が響いてきた ♪
もう間違いない。
1度ならず2度3度。しかも、同じ場所でなくて隣町も含めて同時に3か所で…
この初音こそ春告鳥の「春が来たよ」のまさに‶開会宣言〟。
春はこの開会宣言を聞かないと始まらない。
まだかまだかと、これまで何となく落ち着かなかったが、これでやっと心静かに野山を散策できるというものだ。
ウグイスに先導され、佐保姫様もご到着あそばされたようだし、あとひと月もすればサクラの季節がやって来る ♪
この桃源郷に佐保姫様も御成りで、ウグイスもつっかえつっかえ初音を披露してくれました ♪
ソメイヨシノのツボミはまだ膨らんでもいないが…
足元にはタンポポが咲き…
最初に初音を聞いた場所近くではカワズザクラが満開
近所の池と森の公園の鶯はまだ準備中のようだが、アシの足元に変化が…
「早春賦」の1番は「春は名のみの風の寒さや 谷のうぐいす歌はおもえど 時にあらずと声も立てず 時にあらずと声も立てず」だが、ようやく「時は来たれり」で、メデタシメデタシ。
そして2番。「氷解け去り葦は角ぐむ さては時とぞ思うあやにく 今日もきのうも雪の空 今日もきのうも雪の空」とある。
この早春賦の歌詞はとてもきれいな日本語を使っていて、好きな歌の一つだが、「角(つの)ぐむ」って何さ? という疑問が湧いてきた。
この言葉はほとんどなじみのない言葉で、ボクは使ったことがない。
で、調べてみると「葦、薄、真菰などが角のような芽を出す」とあり、例として「あしの葉に角ぐむ程の春風ぞ吹く(新古今和歌集)」(以上大辞林)が揚げられていた。
ということで実際にはどうなのかと、アシの足元を注意深く見てみれば(写真)…なるほど、遠目ながらまだ瑞々しいハッとするような若緑のとんがった芽が地際、水際から吹き始めてきているではアリマセンカ。
まさにこれが「角ぐんできた」ということなのか!
森の奥ではマユミの新芽が吹き始めていた
こちらの芽の先もやや尖り気味だが、鋭角じゃないから角ぐむとは言わないらしい。単なる「芽吹き」ですかね…