雪解雫は「ゆきげしずく」と読むが、先日初めて訪ねた平泉の中尊寺の堂宇に積もっている雪も、日ならずして賑やかな雪解けの音を境内に響かせるはずである。
目に浮かぶようだ。
あそこへは新緑のころか、ヒグラシの透きとおった鳴き声が境内に響くころにでも、もう一度訪ねて見たいものである。
季節は着実に進んでいて、昨日は立春だった。
サクラの開花予想も出されて、暖冬の今年は東京都心で平年並みの3月26日くらいだという。
去年の冬は寒かったそうで、改めて言われるとそうだったっけ、と1年前の記憶さえ怪しくなっているのだが、サクラは寒い冬をくぐった方が早く咲くんだそうである。
バラは例年だと5月の連休過ぎ辺りから咲き始めるのだが、去年はそれよりも早く、ちょうど連休前あたりから咲き始めたことは確かに記憶している。
そのデンでいくと暖冬の今年は平年に戻って連休過ぎ辺りということになるが、どうなりますか。
サクラもバラもバラ科の同属の植物だから、双方相通じるところがあるんだろう。
珍しく妻も用事がなかったので、2時過ぎに連れだって夕食の買い物がてら散歩に出かけた。
車はもちろん、人通りもないような山道を選んで春を探しながら、ぶらぶら行ったのだが、紅白のウメが山間の畑の脇で満開になっていたほか、道端にオオイヌノフグリが咲いてはいたが、まだその程度である。
暖冬とは言いながら先週辺りは3、4日、氷点下の最低気温を記録していたから雑草の中には縮れ、しおれてしまったものも目立つ。
野の植物は立春を前にいささか出鼻をくじかれた感は否めないのだ。
立ち寄ったコンビニでアイスクリームが当たり、次に寄ったスーパーマーケットのパン屋では何と2個もおまけがついて、立春に連れ立って買い物をすると良いことがあるもんである。
これぞまさしく立春大吉、大当たり~ぃ、である。
こういう極ささやかなことでも喜ぶ心根というものは大切にしておきたい。
日本中で立春に仲良く連れ立って買い物をした夫婦には、きっと良い出来事が待っていたはずである。そういう日なんである。
春雨やゆるい下駄借す奈良の宿 与謝蕪村
水に浮く柄杓の上の春の雪 高浜虚子
春立つやそぞろ心の火桶抱く 高浜年尾
一枚の餅のごとくに雪残る 川端茅舎
雪とけてくりくりしたる月夜かな 小林一茶
待ちわびた春だけあって名句はあまただだねぇ。
よし、いっちょう…
ぽっかりと出現した“桃源郷”に咲く紅白のウメの花。
陽射しは確かに春である。
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