宮沢賢治が「光のパイプオルガン」と呼び、開高隆は「レンブラント光線」という言い方を好んで使ったそうだ。
他にも「天使の梯子」「ヤコブの梯子」「ゴッドレイ」などと言う名も。
気象用語でいう「光芒」あるいは「薄明光線」の事だが、その光の筋が今朝は富士山を通り過ぎ、さらに西の彼方へと伸びていた(見出し写真)。
夜明けの海辺で富士山がだんだん姿をはっきりさせてくるところを眺めていると、この現象が現れた。
初めはこの光の帯の出所がどこだかピンと来なかった。
まさか西に沈んだ太陽が放った光 ? まさか、東から太陽が上がりかけている時に西から光が射すものか…
となると…
東の空を振り返ると、間もなく太陽がスカイライン越しの雲間から顔を出そうかというところ。
その雲間から一直線に幾筋かの光芒が立ち上がり、天空を駆け上ってまだ暗い空に吸い込まれて行く。
その吸い込まれてしまったはずの光の筋は西のスカイラインに近づく頃に再び光を取り戻し、そして薄明光線の名前の通りもう一度消えていく…
(光と書き、実際そう思ったのだが、もしかすると東から立ち上った光芒の影の部分がこういう具合に見えるのかもしれない)
ほんの数分間の出来事だったが、東と西のスカイラインが何の障害物も無く見通せるところに立っていたお陰で、まさにボクの五体はパイプオルガンの振動で共鳴し、レンブラント光線の清澄な色合いに染まるがごとく、得も言われぬ至福のひと時を迎えたのだった。
でも、なぜかこの後、江ノ島島内に入り湘南港防波堤に上がろうと自転車を漕いでいくと後輪に違和感を感じ、止まってタイヤを点検すると長さ4cmほどもある曲がった釘がぶすりと突き刺さっている ?!
瞬く間にタイヤの空気は抜け、まだ5:30前の早朝にボクは途方にくれたのだった。
やれやれ…
4:48 いつものように坂ノ下の由比ガ浜海岸 画面上端に光る星は宵の明星
4:55 稲村ケ崎はまだいささか闇の方が優勢で、街灯の光りがより際立つ
空気は澄んでいて富士山の山容がシルエットとなって浮かんでいた
4:56 9月に入ると稲村ケ崎の沖に漁火がちらほら浮かぶようになってきた
5:14 江ノ島に渡る弁天橋の上から 富士山の頭上の空がほんのり茜色に染まるか染まらないかのころ
5:14 ふと目を凝らすと西の空に明るい所とそうでないところが現れ始める
5:16 「天使の梯子」にしたって「レンブラント光線」と気取ろうと光源がなければ光の筋は現れないだろうに…
5:16 まさか数時間前に沈んだ太陽光線の名残が…あるわけない !
(もしかすると光の筋ではなくて、光芒の「影」の部分が反対側の空まで届いてこう見えるのかもしれない)
5:18 同じ場所から東の空を振り返って納得した まさに登らんとする太陽から光の筋が帯のように立ち上っている
この光線が天空をよぎり はるか西の彼方に伸びているという訳なのだ
驚くには及ばない この光はちっぽけな地球など簡単に飛びぬけて億万光年の彼方の宇宙の果てに向かって伸びているのだから ♪
ボクが見たのはほんのわずかな光の断片に過ぎない そう考えただけで今朝は気宇壮大ではなはだ気分がよろしい
5:29 いつの間にか太陽が昇っていた