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平方録

はるばる峠を越えてきたんだねぇ

東京と川一筋を挟んで向かい合う街に用事があって横須賀線に揺られて出かけたら雪の綿帽子をかぶった貨物列車とすれ違った。
如何にもたった今、大雪の峠を越え国境の山脈に掘られた長いトンネルを潜り抜けてたどり着いたばかりの風情が、雪に縁遠い暮らしをしている身には眩しいし、オッ、そうか!確か彼の地は今大雪に見舞われていたっけな、と改めて思い知らされ、その証拠の生々しさにたじろがされる思いである。

そこはかつて広大な敷地に何十本ものレールが敷かれた貨車の操車場で、東海道本線を東進してきた貨物列車や北国からやって来て東京を経由して西の各地に運ばれる荷物を満載した貨物列車が集まり、改めて行き先を振り分けられる場所だった。
民営化後その規模は大幅に縮小し、かつて線路が広がっていた場所にはいま高層ビルやマンションが立ち並ぶが、それでも規模を縮小しつつ操車場としても細々と機能しているようで、傍らでは何両もの電気機関車やディーゼル機関車が待機していて往時を忍ばせている。

見出し写真に写っている貨物列車の屋根の雪は大したことはないが、これは走る電車内から写せる貨車がこれしか雪をかぶっていなかったということで、仕方なく掲載した。
ボクが「オオッ!」と声を出しかけた貨車の屋根はこんなものではなく、屋根には零れ落ちんばかりの綿帽子がうず高く積み上がっていて、まさに「たった今、雪国からたどり着きましたです、ハイ」と息を弾ませながら返事するような姿だったのだ。
慌ててiphoneを取り出したが、お互い別方向に走っているのであっという間にすれ違ってしまったことと、隣の線路では近すぎて撮影しにくかったこともあって残念なことをした。

東京駅の新幹線ホームを発着する雪国往還の超特急列車の屋根もまた綿帽子をかぶっていることだろう。
その姿にいちいち反応するのは除雪の苦労を知らない土地に暮らすノー天気な人間のお気楽な感覚なのだが、やはり雪国の一端がこちらにもたらされ、生々しい証拠として突きつけられるだけで様々な感慨というものは湧いてくるものなのだ。
去年までなら、こういう光景を目の当たりにすれば「オッ、雪見酒でもしてくるか」と上越国境の清水トンネルでもくぐればそれが現実のものになった。
友人が暮らす山形県には積雪が4mを超すと宿泊代がタダになる秘湯の温泉郷があって狙っていたのだが、昨年も今年も暖冬やらコロ公のせいで実現しないままである。
さすがに年明け以降もあきらめるしかないだろう。
カップ酒を片手に列車に乗ってくることさえためらわれる。
かくしてテレビのニュースで「へぇ~」「ほぉ~」と言葉を漏らすしかないのが如何にも切なく、物足りない。

今朝午前4時過ぎの外気温は1.6℃だった。
南関東の海辺の街では寒さの底の2月の気温だ!
冬至もまだだぜ。
寒波はこんなに南まで律儀に降りてくることないのに…
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