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平方録

芋煮の湯気に思いを馳せる

 


山形の友人が「芋煮が美味しいよ」と自家製野菜のサトイモ、ネギなどをどっさり送ってくれた。
こちらで調達した牛肉とこんにゃくを放り込めば出来上がりで、実に簡単かつ栄養に飛んだ美味しくてちょっと野趣に富んだ鍋の出来上がりである。
早速、昨日の夕食はこの芋煮鍋にして、焼酎の炭酸割をグビリグビリやりながら舌鼓を打った。
 
山形市内を流れる馬見ヶ崎川の河原にはサトイモの収穫時期になると日本一と言われる大なべが据えられ、何千人分もの芋煮がたかれる。
材料の分量を聞いたことがあるが、サトイモ○○トン、ネギ○○千本、調味料の酒、みりん、日本酒各○○百本…
その桁の違いに呆れるくらいの量をいっぺんに鍋に放り込み、ぐつぐつやるさまは圧巻そのもの。
これを土木工事に使うパワーショベルを使ってすくい上げ、大きなバケツのような入れ物に小分けし、さらにそこから希望者に振る舞われる。
勿論パワーショベルの先端部分、つまり芋煮をすくう部分は専用のものに付け替えて使用する。
そのいも煮を大切そうに手に持って河原のあちこちに散らばった人たちが秋の柔らかな日差しを浴びながらニコニコ顔で頬張るのである。
 
大鍋のビッグイベントが開催される以外の日は、休日ともなれば河原のあちこちから煙が立ち上り、持ち込んだコンロと鍋で自慢の鍋をこしらえて楽しむ人々の和やかな輪が出来る。
何度かこの芋煮祭りに誘ってもらったが、収穫の秋を喜び、1年間の労をねぎらう素朴だが、心温まる行事に見えた。
北国ではこの行事が終わると、そろそろ冬支度の準備に取り掛かかろうかということになるのだという。
気持ちの切り替えというものは大事なことである。
ましてや厳しい冬が待ち構えているとなれば…
 
南関東の海辺の町ではそういう特別な事情も条件も何も揃ってはいないが、送ってくれたサトイモの独特のねっとり感や味そのものの深さに感心し、ネギの緑が煮込んでも色あせずに瑞々しさを保ち、口中でもシャキシャキと歯ごたえを残していることに驚く。
山形市内からも冠雪した月山が見えるという。
いずれまた現地でこの鍋を味わえる日が来ることだろう。
せめて心づくしの収穫物を分けてもらい、美味しい夕餉にありつけることができたことを喜び、ありがたいと思うのである♪
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