初音を求めて尾根道でも歩こうかと思ったが、天気予報は北寄りの風5mというモロに受けると寒そうな予報を出していて、これで風さえなければ随分ポカポカしてきそうだなというくらい陽の光の注ぎぶりは申し分ないと思ったのだが、あきらめた。
で、江ノ島の激しく繰り返されるアップダウンの急階段を上り下りしてくることにした。
目的は一昨年の台風による高波被害でメチャクチャにされた稚児が淵の岩場にあった茶店の様子を見がてら、サザエのつぼ焼きでも肴に1杯やれば佐保姫様にも喜んでもらえるだろうと思ったのだ。
ウグイスはまた別の機会に…
島の西側の浜辺に出てみる。海辺では風はさらに強かろうと思っていたら、あにはからんやほとんど微風程度。時折、サァ~ッと吹いてくる北東風はさすがに冷たかったが陽光に負けていたと思う
島の南側の稚児が淵に行く渡船に大勢の人が乗っているが、横着はせずに一歩一歩階段と坂道を登って行こうと思う
参道を進んだ先にある江の島神社の大鳥居の奥には竜宮城の入り口みたいな「瑞心門」が参詣者を出迎える
ここから登り「辺津宮」「中津宮」「奥津宮」と階段を上り下りしながら順繰りにお参りをして行くのが正式ルートだが、鳥居をくぐってすぐ右手の交番脇から急坂を上っていくことにする
参拝ルートを避けて〝人生裏街道大好き〟みたいな気分で、奥を目指すのだ
普段は参拝客の姿もほとんど見かけない〝裏街道〟なのだが、「いったいどうしちゃったのさ ?! 」とびっくり仰天するくらいの人でにぎわっている…
すれ違う人は小学生を中心にした親子連れがほとんどで、みな手に地図とボールペンを持って「あっちだ」「こっちだ」と顔を突き合わせては地図を覗き込んでいる
観光協会がたくらんだオリエンテーリングらしく、賞品が懸かっているので皆真剣そのもの
普段だとアジアの隣国からの観光客の姿ばかりが目立つ江ノ島なのだが、この日耳に届く言葉は日本語ばかり
政治問題やら変な感染症の流行がきっかけだから何れまた日本語が肩身の狭い参道風景に戻るんだろうけどね
NHKBS2の「こころ旅」という自転車の旅番組でヒノショーヘーが上り坂を漕ぐ苦しさのあまり下り坂で「人生、下り坂最高ぉ~ ! 」と叫ぶ傑作場面があった
大いに共感するところがあるが〝裏街道〟だって捨てたものじゃない
現役時代、裏街道に追いやられたと思い込み、しょんぼりしていじけた思いを抱いたことも無いではないが、振り返ってみれば裏街道なんてものは幻想であって、裏街道自体が非存在のもので、勝手に思い込んでいるだけの、実はそれがその人間のたどるべき堂々たる1本道なのだ
それを胸を張って進めばいいだけの話なのだ
でも悲しいかな、そのことになかなか気づかず、うじうじ、イジイジして、挙句に人生そのものを狂わせ、ダメにしかねない輩もいる
どう気付くか、あるいは気付かせるかだよなぁ
人生いいことばかりが続くわけがない。逆に裏切られ悲嘆にくれるような事ばかりが続くわけもない。朝が来れば夜も来る。明けない夜なんてありゃしない。「フン ! 」と鼻でせせら笑い、人生半分ナメてかかるくらいな気持ちで過ごしゃいいのさ。ケセラセラでもいいし…
ま、ボクは半分いい加減だからそれでやって来れたわけだけれど、一番いいのは、どんな時だって何事も無かったように襟を正し、胸を張って背筋をピンと伸ばし、前をまっすぐに見て進んでいくことだろうね やれるんだったらそれが一番 !
急階段を降りたところの茶店は復活していた
ボクよりの更に年輪を重ねた大先輩の夫婦がカイロウドウケツのように仲良く店番をしていて「年々、台風が大きくなってきちゃってるからねぇ。昔はここまで波が来るなんてことはなかったんだけどさぁ」と呆れた顔をしていた
サザエのつぼ焼きにしたかったけれど小さいというのでイカ焼きにした
でも、冷凍品の硬いイカで、まだ歯は自分のものだから何とか歯が立つたが、やっぱり適度な弾力と歯切れの良さが必要だよ この辺りはニンゲンと一緒 !
それはともかく、あの硬さ、カイロウドウケツたちには歯が立たないはずなんだがなぁ 自分達にも歯が立たないものを売っちゃぁいけないよ お酒も含めて950円ナリ
茶店で売っている350円の網を買いに来た小学生がいたので広い岩場を探したら、仲間数人と潮だまりで足をにょっきり出して遊んでいた
水温むっ…てやつだな イソップ童話の北風と太陽の寓話に当てはめれば太陽がやや優勢ってところか
渡し船で戻れば楽チンだが、再び重荷を背負った人生の道に戻り ? 急な階段を1歩ずつハアハアゼイゼイさせながらも登って行き、途中にほとんどの観光客が見向きもしないような句碑でもあれば、感に堪えずに見入るような格好で息を調えたのでありました
そうして到着した島の頂では満開の河津ザクラが出迎えてくれましたよ
島と本土 !? を結ぶ人道橋の弁天橋と車道の江ノ島大橋を島側から望む
島へのアクセスは湘南モノレール、江ノ島電鉄、小田急江ノ島線と3つの鉄道のほか島内まで乗り入れる江ノ電バスと京急バスがある
しかし、ごらんのとおり京急バスの休日ダイヤが過疎地並みなのは祝休日の江ノ島大橋を中心とする湘南海岸一帯の交通渋滞が甚だしく、バスがロクに走れないせいである
普通、観光地のバス路線は祝休日になると本数を増やすものだが、ここは真逆で申し訳程度にしか走らないヤレヤレな路線である
鎌倉駅行きはたったの4本 !