運転免許証や健康保険証、キャッシュカード、スイカカードを入れている定期入れを忘れてきたのだ。
ズボンのポケットに１００円玉３個があるだけで、それ以外の現金もない！
家からゴルフ場まで３０分ほどの距離を運転して行ったが、免許不携帯のまま運転したことになる。
比較的暖かい朝だった。
家出の朝食時、ゴルフ場に着いたらジャケットを脱いでベストに着替えればすぐにコースへ出られるようにと、ベストに大事なものを入れたまま食事をした。
そして出掛ける段になってジャケットを羽織ったのだが、重ね着は暑いのでベストを脱ぎ、その脱いだベストをそのまま着替えを入れたバッグに入れなくてはいけなかったのに、そのままにしてきてしまったのだ。
ゴルフの支払いから飲み会の支払い、帰りの電車賃をどうするのさ！
そりゃぁ一緒にプレーする３人からかき集めれば何とかなるだろうが、そんな七面倒くさいことは避けたい。
幸いなことに携帯電話だけはズボンのポケットに入っていた。
で、携帯電話を取り出してとにかく妻に事情を話して家から持ってきてもらうしかないなと考えたのだ。
ゴルフの後に飲み会があるので、車は一緒に乗ってきた妻に乗って帰ってもらったのだ。それもたった今ゴルフ場を出たばかりで、比較的交通量の多い１３４号線を東に向かって走っているころで、車を道路脇に寄せて電話に出るのがたやすいことではないことは分かっていた。
しかし、こちらの窮状は伝えなければならない。
電話機を鳴らすこと２度３度。もちろん応答はなし。
合間に事情を説明したショートメールを送って返事を待ったのだ。
スタートの順番が回ってきて、いよいよプレー開始という段になってようやく妻から「今はまだ江ノ島のところだが、事情は分かったからこれから家に戻ってベストを取り、ゴルフ場に届ける」と電話があった。
付け加えて「友人との待ち合わせの時間をずらしてもらうから大丈夫だ」と告げた。
なんてこった。妻は友人と出かける約束をしていて、その友人にまで火の粉が飛んでしまったことになる！
失敗するにしたって、できるなら被害は自分一人にとどめたいではないか。
いよいよボケが始まったということか…と暗澹たる気持ちになる。
ここのゴルフ場のトイレには「紙オムツはそのまま放置するのではなく、備え付けのビニール袋に入れて容器に入れてください」という張り紙があるのだ。
張り紙を見た時はオムツをしながらゴルフをするのかとびっくりしたが、他人事ではないような気がしてくる。
いやはや何とも――な事態を引き起こしてしまったものだ。
ドタバタしたのでスコアを書きとめるカードを忘れてスタートするし、散々である。
でもなぜか肝心のスコアの方は普段よりもずっと良かったのは、他人を巻き込んでドタバタ迷惑をかけ、自分は何事も無かったようにやりたいことに専念するという、やはり年寄りのわがままな特性が如実に現れたのではないかと、これはボクの自己分析なのだが、多分間違いはないのではないか。
我ながらおぞましいことではある。
スタート時に少しポツリポツリと雨が落ちてきたがすぐに止み、その後は晴れたり曇ったり。プレーを終えると一転、土砂降りになった
良く晴れていれば松林の上に富士山が顔をのぞかせるのだが…
