平方録

シマアジの口福

正月休みを利用して姫の一家がやってくるというので、魚の買い出しに行ってきた。

海から離れた北関東の街に暮らしているので、特に姫の母親には好物のピッチピチの新鮮な刺身を食べさせてあげたいという親心からなのだ。
で、国道134号線を南下し佐島漁港まで車を走らせた。
わが街にも漁港はいくつもあるが、一昨年の大みそかに腰越のなじみの魚屋が店じまいしてしまって以降、地魚を手に入れようとすると手っ取り早いのが佐島漁港に面した2軒の魚屋なのである。
少々距離が離れているのが難点だが、海沿いをドライブしてくるのも悪くないと思い、片道40分前後のドライブをしてくるのである。

暮れも押し迫ってくると街の魚屋の多くは鮮魚などロクに扱わず、かまぼこやら冷凍のカニの足やら、正月向けのものが幅を利かせていて、種類も鮮度も疑問符付きのものしか並んでいないのである。
漁はいつまであるのかよくわからないが、そろそろ正月休みに入ってしまう頃だろう。
29日などと言うのは、最後の漁に近かったのではないか。
そういう意味では最後のチャンスだったわけで、これからしばらく鮮魚とはしばしのお別れのはずである。
だからか魚種は比較的多くて、大きめのアジを5匹、南蛮漬け用に小アジを一山、そして白眉は体長40センチ超のシマアジで、いささか小ぶりではあるが、店の人に「どうなの?」と聞いたら「そりゃあもう、刺身にしたら絶品ですよ」というので、迷わず手に入れてきた。

3枚におろすか5枚におろすかで少々悩んだが、切り分けたところの見た目を考慮して3枚におろすことにし、大小2本の出刃包丁を使って、これはもうほれぼれするくらい上手に背骨から身を分離させたのである。
こういう手技を持っていれば十分、板前の資格はありそうである。
🎵包丁ぉ~いぃっぽん~、さぁらしにまぁ~いぃ~ぃ~てぇ~

味の方はさすがに高級魚ですナ。
見た目の美しさは言わずもがな。白みを帯びた小片の背に赤い縞模様がとても鮮やかで、見るだけで素晴らしく食欲をそそるのである。
口中に入れれば、ねっとりとした食感で歯ごたえもあり、かむと甘みがにじみ出てくる。しかも、乗っている脂がくどくなくて上品なのである。
舌の肥えた姫が喜んで口にしていたのが何よりである。
ジイジの家に来たら、ごちそうは目の前の海で獲れたばかりの新鮮な魚の刺身なのだ。
よおっく舌におぼえこませなければならない。それが年長のものに課せられた責任というものでもある。
そのデンで行くと、昨晩の食卓は十分に合格点ではなかろうか。

姫の一家は一旦外泊して大みそかに戻ってくる。そして翌元旦には妹君ともども帰ってしまうが、姫だけは6日まで残ってジイジとバアバに甘え放題の天国を謳歌するのである。
もちろんジイジはそのシモベとなって相好を崩しっぱなして奉仕するのだ。
正月というのはそういう季節なのである。



相模湾で獲れたばかりのシマアジ


どことなく荒々しい感じの相模湾と富士の姿は珍しい
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