立春を迎えた途端寒波に見舞われている。
と言ってもこれは毎年のことで想定内だが、日本海側の2度目のドカ雪には驚かされる。
そして、ここ南関東にも寒波の端っこがやって来ているようで、昨日の最低気温は-2.6℃だったし、今朝も-0.6℃(4:50)と、寒さに慣れない人種には骨身にこたえる冷え込みようと言っていい。
お陰でベッドから抜け出すのも大仕事で、意を決して暗闇の凍える空気に身をさらしながらガスストーブに火を点け、その前にうずくまって部屋の中と身体がそこそこ暖まるまでじっと待ってからでなければ着替えもままならない。
それでもどこかに「お別れが近いのだから、あと少し仲良くしてやろうか」という気持ちがないでもない。
先が見えて来たことで気持ちに余裕が生まれているのかもしれない。
昨日は午前中、気温は低かったがよく晴れ上がって風も弱く、散歩には好都合の日よりだった。
そうだ、ボチボチいい頃かもしれない…そんな気持ちで足を向けたのが‶秘密の桃源郷〟と密かに呼んでいる、わが家から歩いて20分ほどの隠れ里である。
誰もがここを目にした瞬間「えっ!?」と絶句するような空間が、奇跡のように広がっている。
もちろんこの隠れ里と山を隔てた周囲には人家が立ち並んでいるのだが、いつ行ったって人の気配はないし、しんと静まり返っているだけである。
その隠れ里の畑の真ん中にに毎年紅白のウメの花が咲く♪
この梅がそろそろ見ごろなのではないかと足を向けてみたのだ。
平安の歌人・紀友則に次のような歌がある。題がついていて「梅の花を折りて人におくりける」とある。
君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をもしる人ぞしる
大岡信の解説によると「梅の花を折って人に贈る時に沿えた挨拶の歌である。あなた以外の誰に見せようか、この梅の花を。色をも香をも深く味わえる人にしか味わうことは出来ないだろうから。梅の花をたたえつつ、実はそれ以上に、贈られる人の心の深さをたたえている歌」ということのようである。
今の時代、ウメの枝を折るようなことはやめておいた方がいいが、友則のような気持ちで隠れ里のウメの花をそっくり全部、「しる人ぞしる」以外の人も含めて、分け隔てなくこのブログを訪ねてくださった方々にお届けしたいと思うのであります。
ちなみにここで使われた「しる人ぞしる」という表現について大岡信は「この古歌によって日本語に根付いたのではなかろうか」と言っている歴史的、記念碑的なもののようである。
左手前の木はソメイヨシノ ここでの花見も人の気配が少ない分、オツである
江戸時代、江ノ島詣でには東海道藤沢宿からのルートが一般的だったようだが、この道もまた「えのしま道」だったらしく、道祖神にはかすかにそれと読める文字が残っている
昨日も一昨日も富士山だけは雲に隠れていた