平方録

ジジイはジジイ故にヘトヘトになるのだ

新幹線の改札口に姿を見せた姫と妹君は元気いっぱいで、姫の方は遠くからボクの姿に気づいてニコニコと大きく手を振りながら近づいてきた。
大きなリュックを背負い、ゆったりとした白いブラウスに濃いグリーンの短パン姿で、ばね仕掛けの人形のように動きにメリハリがある。
もう小学校3年生だから、間もなく2歳になる妹君の面倒も見られるし、母親にとっては頼りになる存在になりつつあるのだ。

わが家へ向かう電車のボックス席に座るとリュックから本を取り出して読み始めた。
感心なことだと思って「何を読んでるの? 」と聞くと、「ことわざ辞典」と書いてある表紙をかざして見せてくれた。
ますます感心したので、「よし、明日から勉強時間にジイジがことわざの問題を出してあげよう」と言うと、「だめだめ! 」強く拒絶する。
母親が「マンガだけ読んでいるのよ」という。
なるほど、そういうことか。
とはいえ漫画の中身はことわざの説明である。まったく触れないよりは、いくらか印象は残ることだろう。最初はそれでもいいのだ、とジイジというものは孫のことになると心が広く大きくなるのである。

姫の母親のリクエストで、老人ホームで暮らしている92歳になる妻の母親に会いたいというので、長女と若君も誘って大挙して会いに行った。
ボクも久しぶりの面会だったが、顔の色つやは申し分ないくらいに良くて、むしろ若返ったような印象を受けてびっくりした。
老人性の痴ほう症があるので、多分一人一人の区別は無理だったろうが、穏やかな目つきでこちらを見ていたから、何か感じるところはあったかもしれない。
ホームではスタッフの人たちから愛されているようで、居心地が良いのだろう。100歳までは十分生きられそうである。

わが家に戻った孫たち3人は、比較的広々としている居間に放たれると、まるで放牧場に連れ出された馬のように、食事を挟んでの大運動会をはじめるありさまで、それに付き合う気の若いボクはヘトヘトになりかけた。
若いのは気だけだと言うことが、こういう時には浮き彫りになるのである。

ところで、老人ホームを出る時に娘2人の乗った車がさっさと先にどこかへ走り去ってしまい、どこに行ったのだろうといぶかったら、姫が「行先は知ってるよ、でも教えない」と意味深なことを言う。
そうしたら、その答えは食後のサプライズとして示され、びっくりした。

先ごろボクと妻とそろって迎えた誕生日祝いと古希の祝いを兼ねたケーキがプレゼントされたのだ。
古希の祝いというものは69歳の数え年でやるものらしく、ピンとこないがそういうものであるらしいのだ。
ま、それはともかく、みんなで切り分けたケーキを食べたのだが、これがおいしくないわけはない。メモリアルな味が口中に広がったと、とりあえずは事務的に記しておくことにする。

ここでも姫には驚かされる。
若君にケーキを食べさせてあげていたのだが、自分の分を食べてなお欲しがると、食べかけの自分のケーキを食べさせてあげたのである。
自分のものは自分のもの、というのが子供の不文律で、むしろ自分のものは確保した上に、さらに他人のものも欲しがるというのが相場ではなかったか。
これはコペルニクス的な大転換とも云うべき…… そこまでいかないまでも、感心な態度である。
随分とお姉さんになったものである。






今朝は初めて大輪の青いアサガオが咲いた




床に寝転んだ自分より大きなミッフィーを起き上がらせようとする妹君


食後の運動にミッフィーに3人がかりで抱き着いたりして大はしゃぎ
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