庭の方からしきりと何かが吹き飛ばされるような音が聞こえる。
多分、物置の壁にぶら下げた箒の類が風であおられるたびに音を出しているのだろう。
ベランダに出てみると、まだ真っ暗な空の彼方から打ち寄せる波のゴォ~ッという連続音が聞こえてくる。
星は見えているのだが、スッキリとは晴れていないらしく、かすかな光しか届いてこない。
西の風が強い。
隣町にある気象庁のアメダスによれば00:20時点で風速は6.1m。瞬間に吹く風はもっと強いはずだ。
気温も04:53時点で7.4℃だから、それほど寒い訳ではない。
今日から最強クラスの寒波がやってきてしばらく居座るという。
南関東の海辺の町もその勢力圏に入ってしまうらしいが、ずっと晴れマークが並んでいるのはせめてもの救いである。
太陽が顔を出してくれていさえすれば気分が違う。
友人からいただいたお歳暮にお返しをしたら礼状が届き、その内容を読んでびっくりした。
「今年はコロナ禍でも3月からこれまで、ゴルフを57回、テニスを52回楽しみ、健康づくりの一年でした」
10か月間で57回と52回!
ゴルフの57回に至っては40週で割ると週に一度どころか週に1.4回…つまり週に2度やる週が17回もあったという計算である。
これにテニスの52回を加えて計算すると2.7日に1度、ゴルフかテニスをしている計算である。
予定していた日が雨のこともあるだろう…急用が入る日もあるだろう…
ボクより4つか5つ年上だから、かれこれ傘寿に手が届く年頃である。
それでこれだけの回数をこなすとはスゴイとしか言いようがない…と同時にいささか呆れた。
それと、首都圏と違ってプレー代もリーズナブルな地方のゴルフ場で会員権を持っているとはいえ、タダでは楽しめない。
体力もさることながら、それを可能にする経済力も備えていなければならない。
彼は間違いなく「上流老人」であって、加えてプラチナの価値を持つ健康な体を持ち、さらにその健康に磨きを掛けようというのだから誠にアッパレと言うしかない。
いるんですな、そういうご仁が。
まぁ、ボクにもパトロールと言う健康でなくては出来ない楽しみがあるにはあるが…
経常経費と言えば昼時のエンジン補給用のコンビニのおにぎり代とエンジンのオーバーヒートを防ぐための水分補給の水代くらい。
特に夏場の水分補給は重要で、500mℓのペットボトルなら最低でも3~4本は必要だが、幸いなことにそれくらいの経済力は維持できている。
まぁ、これで下流老人と言ってしまえば嫌味にしか聞こえないので中流老人ということにしておくが、身の丈と言うのは大事ですな。
あるがままを受け入れる…何の不満がありましょうぞ。
そしてワーズワースは「低く暮らし高く思う」を言い、岩波書店を起こした岩波茂雄は「低處高思」と四文字熟語に言い換えた。
大事なのはその辺りでしょうか。
賛意なのか、それとも異議でも唱えたいのか、物置の方から箒が暴れるひと際大きな音が聞こえた。
わが家のパンジー