平方録

コクエイホウソウの〝大蛇行〟

昨日は早朝の気温が18度しかなく、おまけにシトシトと雨が降り続く陰気な天候で風も強く、これじゃぁ滅入るなぁと思っていたら昼過ぎにはぐんぐん青空が広がっていった。

台風15号はまだ小笠原近海でぐずぐずしていて、はるかかなたの関東の南岸にも強い風が届いているのだが、一昨日に続いて波が豪快に砕ける様子を見に行こうと思い立って江の島までぶらぶらしてきた。
江の島に渡る橋を渡ったのは午後の2時過ぎだが、驚いたことに橋を埋め尽くすような人の波である。
それは江の島神社の参道にまで続き、狭い参道は坂の下から見上げると立錐の余地がないくらいに人の頭で埋まっている。

ボクは高波を見に来たんであって人波を見に来たんではない。
顎が外れる思いで眺めていたが、考えてみれば近所の人たちが大挙してきたわけでもないだろうから、多くは遠くから遊びに来た人たちだろう。
天気予報を信じて晴れるのを見越し、雨の中を出かけてきたんだろうか。
そういえば江ノ島の入り口の国道134号の鎌倉方面に向かう東行きは大渋滞になっていた。
もしかしたらボクと同様に打ち寄せる高波見物なのかもしれない。波打ち際を走る七里ヶ浜辺りなら車に乗ったままでも間近に海が見えるからね。

でもね、波は一昨日ほど高くなかったんですな、これが。
湘南港の灯台の建つ防波堤まで行ってみたけれど、これが拍子抜け。
天気予報は関東の太平洋岸には6メートルの波が打ち寄せるだろうと予想していたのだが、まあ、大人しいことでした。完全な肩透かし。チャパチャパ程度。
だから防波堤や波打ち際で「詐欺だっ! 金返せっ! 」と叫んでいる人がいっぱいいた。ウソです。

でも波が大したことないなら食欲じゃ、食欲の秋じゃぁと実に変わり身の早い連中ばかりらしく、午後2時を過ぎているのに島内の飲食店はどこも長蛇の列ができていた。
夏のことなんかケロッと忘れてしまっているんである。江の島は薄情者たちに占拠されてしまった。

ところで話は大蛇行。
そう曲がりくねるのです。大蛇行は大蛇行でも黒潮の大蛇行。
昨日だか一昨日のテレビのニュースが伝えていた。おかげでシラス漁は大打撃だろう、他の魚種にも影響が及ぶかもしれない、と深刻そうな表情をして研究者らしき人物がしゃべっている。
注意して聞いていれば話している人物が静岡県の水産試験場関係者なので、その懸念は駿河湾の話なのだなと察しはつくはずである、

ところが、多くの人は「ああ、黒潮が大蛇行するのか。だからシラスが獲れなくなるのね」とざっくり捉えることだろう。
場所なんか気にしないんである。
ボクも初めは相模湾も同様なんだという印象を受けたんである。
何せ、好物のシラスである。あの小さな目が一斉にボクを見詰めようともへっちゃらで生のシラスを口に放り込むのである。
夏は冷酒で合わせると、これがまた素晴らしいのだ。つぶらな瞳なんかいちいち気にしてられますかってんだ。

で、心配になって神奈川県水産技術センターのホームページで海況図を調べたところ、ん? だったんである。
つまり、駿河湾沖でははるか南を流れている黒潮だが、それが伊豆半島の沖で北に流れを変えてまっすぐ北上するんである。
北上してきた流れはマラソンの折り返し点を回るように、八丈島と御蔵島の間で何とUターンして再びはるか南に方向を変えて流れていくのだ。
海況図を見ると一目瞭然なのだが、それは不自然なくらいに見事なUターンであって、自然界がどうしてあんな芸当ができるのか不思議千万なのである。

あのテレビニュースは本州南岸の黒潮全体が日本の沿岸から遠く離れて流れてしまうような伝え方をしていたが、あれはミスリードだろう。
誤解が生じないように「駿河湾では」と限定付きの説明をすべきである。さもなくばせめて太平洋岸全体を俯瞰した黒潮の流れについて説明すべきで、あの内容はローカルニュースでやるべき類のものだぜ。
研究者はもとよりそのつもりなのだろうが、伝える側が言葉足らずなのだ。国営放送め。全国ネットのニュースだぜ。反省しろ! 受信料返せ!




神奈川県水産技術センター作成の8月31日の海況図。画面中央のやや下寄りのところにある島(29°の数字)が八丈島で、ここで点線の流れ(黒潮)がきれいに折れ曲がっているのが分かる。八丈島の上方の点線の外側の白い点が御蔵島












高波は収まりつつあるのだろうか…




やがて悲しき…は世の定めだが、今夏は最初から悲しみのエレジーが海辺を覆っていたようである。片瀬東浜海岸では海の家の撤収作業が進む
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