マイナーなグラビアアイドルの記録媒体が写真集からDVDにシフトしていくのを実感した僕は、それを再生する機器の必要に迫られた。当時、折り畳みベッドの上でオナホールと枕を使って正常位のように自慰に勤しんでいたので、その体勢を維持するには小型のプレーヤーが最適だと判断し、二〇〇五年の秋に家電量販店で東芝の「ポータロウ」を手に入れた。その日の夜にさっそく古書店で買った石井めぐるの「シスター」で試し、性的興奮を喚起しづらい駄作ぶりにがっかりしながらも、何とか射精にこぎつけたのを覚えている。
その頃のイメージDVD(IV)の尺は四十五分から六十分前後で、新作、中古にかかわらず、一回目の再生は全編等倍で見ることにした。見終わるまでに何回射精できたかが良作か駄作かを見分けるポイントで、最初のチャプターで果ててしまったのもあれば、全編通じて一回しか射精できないのもあった。ひととおり見終わった後は、二分の一倍速機能でじっくり堪能し、気に入ったチャプターを何度も繰り返し用いることになる一方、低速でも性的興奮が高まらない作品は、すぐに古書店送りとなった。
この頃からデビュー作は写真集ではなくDVDという素材が増えてきたので、僕は週末のたびにセルビデオ店に立ち寄ったり、インターネットの通販サイトで新作をくまなくチェックした。〇五年の終わりから〇六年の初めは、滝ありさの写真集「ありんこ」がまだ勢いを保っていたが、彼女といい石井といい巨乳美少女にはやや食傷気味で、たまには僕の自慰遍歴のルーツである「お菓子系」で性欲を発散したい衝動に駆られていた。そんな中で一作目のIV「Angel Kiss」を発表したのが、古賀さゆりだ。
古賀はそこらへんにいそうなた佇まいで、スタイルも抜群とは言えないが、それが僕にとってはたまらなく、しかもスクール水着のチャプターもあって、幾度となく性的興奮を喚起させてもらった。ほかの素材との兼ね合いで古書店に買い取ってもらったが、再び古賀でリピートしたい欲求が高まり、中古品を手に入れるほど僕は彼女での自慰を欲していた。それは「お菓子系」を初めて素材に用いた十年以上前から、性的嗜好がまったく変わっていないことの表れだった。
写真集同様、何度も繰り返し使える良作と邂逅するまでには、幾多の駄作と付き合うことになる。DVDは写真集に比べて千円高く、しかもインタビューやメイキングで映されるモデルの素の部分や芝居仕立てのチャプターは本当にどうでもよく、昂っていた性欲を台無しにしてしまう。それなら素材が言葉を発しない写真集のお世話になったほうがましで、〇六年上期に買った作品は古賀以外はあまり印象に残っておらず、この年の年間最多オナペットは滝で、石井の三年連続を阻んだ。
しかし、セルビデオ店に足を運ぶたびにDVDの棚が増えていき、写真集が隅に追いやられていくのを目にすると、僕も滝の「ありんこ」を手放せる良質な素材が出てくるのを期待し、DVDを買っては処分を繰り返すことになる。
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