韓国ドラマ「青い海の伝説」第12話⑥
韓国ドラマ「青い海の伝説」第12話⑤
★★★
ジュンジェはリビングに戻った。ドンピョは切り出した。
「彼女に事情聴取させてくれ」
「ダメだ」ジュンジェは言った。「彼女はショックを受けている。今は休ませないと」
「…」
「それにマ・デヨンのことなら俺の方が詳しい」
「だったら訊きたい。ヤツはなぜ彼女を拉致したんだ?」
「だから車の中でも話したでしょう…あいつは俺を狙ってるんだ」
ジュンジェはテオを見た。
「テオ、防犯カメラの映像を」
テオはテーブルの上のタブレットを手にする。テキパキ操作してドンピョに差し出した。
ドンピョはタブレットを手にし画面を覗き込む。
「おお、これは…殺人事件のあった日だ」
「…やっぱりヤツの仕業だったか」
ジュンジェが口を挟む。
「その日、うちを訪ねてきた。その後…」
携帯を手にした。やり取りしたメールの画面を出してドンピョに見せる。
話がある、とのコメントが出ている。
「これは何の会話だ?」
ジュンジェは説明する。
「事故にあった昏睡状態の知人から来るはずのないメールが送られてきたんです」
横からナムドゥが補足した。
「それでおびき出されたんです」
ジュンジェも続いて言った。
「その知人が遭った事故もヤツが仕組んだはずだ」
ドンピョは頷いて訊ねた。
「ヤツやヤツの知人から恨みを買ったことは?」
ジュンジェは首を振った。
「それは分からないぞ」とナムドゥ。
「マ・デヨンの件は別として―お前たちも」
ドンピョの言葉にすかさずジュンジェは切り返す。
「俺たちを詐欺罪で捕まえようと? 警察に届け出でもありましたか?」
「そうだな。やましいカネだから訴えられない」とナムドゥ。
ドンピョは手帳でテーブルを叩いた。
「罪は罪だろ。お前は俺に成りすましたこともあった…」
「しかし、成りすましたにしても悪いことはしてませんよ。してるとしてもせいぜい罰金刑ですむ程度のものだ」
ドンピョは手にした手帳で叩くしぐさを見せた。
「小賢しいやつめ」
「とにかく、マ・デヨンを早く捕まえないと…手伝うから」
「言われなくても捕まえるさ」
「俺たちのことはヤツを捕まえてからだ。ヤツを捕まえたらあんたの指示に従うよ」
「そんなの信じられるか!」
「家まで教えたろ。俺は…失うものが増えた。どこにも逃げられない」
ナムドゥはジュンジェをムッとした顔で睨みつける。
構わずにジュンジェは続けた。
「だから信じて今日は帰ってくれ」
★★★
自分のベッドに落ち着いたセファは眠れない。寝返りを打ち、目を開ける。
自分を抱き寄せたジュンジェやここでのやりとりを思い返す。
―家具は引っ越す時に移す。
―全部? 誰が?
―お前だ。一緒に来い。
そうして額や髪を撫でてくれた。
セファはにんまりした。
―”一緒に来い”ってどういうことかしら…? プロポーズ? 違うよね…だったら何のため…? 荷物を運ばせるために私が必要だってこと?
口から笑い声がもれる。それも当然だった。
セファのベッドに潜り込んだジュンジェには、セファの心の声が手に取るように聞こえているのだった。
「そんなわけないだろ、まったく…馬鹿だな…」
―他の女と結婚して私がその手伝いを…?
ジュンジェは身体を起こす。ベッドの下に向かって否定する。
「そういう意味じゃないってば…!」
―でも…
その後、セファの声は途絶える。
ジュンジェはきょとんとなる。
―でも? それからどうした?
セファは自分の髪をいじる。
―なぜ、私の髪を触ったのかしら? やさしく撫でてくれたわ。
続きを聞いてジュンジェはほっとなる。ベッドに転がる。笑みを浮かべ呟く。
―可愛いやつだ。
セファはセファでいい気分だった。
―ジュンジェは…もしかして私にゾッコンなんでは? ロマンスが始まるのかしら?
恥ずかしくなってセファは自分の顔を手と布団で覆った。
どうしよう! どうしよう! と掛け布団を叩いた。
しかしすぐ賭け布団から顔を出す。
―でもなさそうよ。その割には態度が冷た過ぎるわ。…いいえ、そうじゃない。私を好きだから髪を撫でたんじゃ? パジャマも青かったし…
セファの声を聞いてるうち、ジュンジェは次第にその声が煩わしくなってくる。
ああだ、こうだ、と考え過ぎじゃないか…もういい、と思ってもその声は続く。ジュンジェはとうとう耳を塞いだ。
―それはゴーサインってことなんじゃ? そうよね。ブツクサブツクサ…。
ジュンジェはたまらず跳ね起きる。小さい出入口を開けて怒鳴いりかける。
「おい! 眠れ…!」
れないじゃないか、とジュンジェは後の言葉を呑み込む。
「どうしたの?」
ふだんと変わらない声がせふぁから返ってきたからだ。
ジュンジェも我に返った。
「まだ寝ないのか?」
「寝るわ」
「疲れてるだろ? 早く寝ろよ。考え事もせず、ぐっすり寝ろ。いいな」
「…」
「でないと、大好きな朝のドラマを見逃すぞ」
「…うん」
何か眠りを押し付けられてる気がしたが、セファは手を開いて頷いた。
「おやすみ」
ジュンジェも手を開いて笑みを投げた。
手を閉める時「考え事をするな」とひと声投げた。
それからベッドに戻ってほっと息をつく。
とたんにまてセファの声が届きだす。
―今、怒ってたわ。どうしてかしら?
ジュンジェはがっくり来る。
「頼む、やめてくれ」
―でも、笑顔で”おやすみ”って言ってくれたわ。
「やめろって!」
ジュンジェは掛け布団を蹴った。
―あの笑顔の意味は何だったのかしら? 心配してくれてるし、私が好きなのかも…ブツクサブツクサ…
ジュンジェはセファの煩わしい声に魘されながらいつしか眠りに沈んでいた。