ビリーは自分たちの額縁写真の前でたたずんでいるアンナを見た。
そばに歩いていった。
「お前、ほんとに大丈夫か? 病院に行ったほうが」
「部屋が変わったわね」
「君が死んで…いや、あの部屋で君を思い出すのがつらくて―でも、君の物はぜんぶそのままだ」
「本当に――そのままだわ」
「ああ、ぜんぶそのままだ。そうして、君の帰りを待っていたんだ」
アンナはビリーの方を向き直った。黙って見つめた。
少しためらった後、ビリーは弁解した。
「”大事な物を探しに来た”と言ったろ。覚えてるか?」
アンナは黙って疑うような目をビリーに向け続けた。
コン室長はあわててヴィラ棟に駆け込んでくる。
「社長、チャン・チョルスは…」
そばにアンナもいて彼はうろたえた。
「コン室長ね」
コン室長は目をぱちくりさせる。
「頭が痛いから出ていって。一人にさせて」
ビリーは頷く。
「わかった。ゆっくり休んで」
ビリーはコン室長を連れ部屋を引き下がろうとする。嫌がるコン室長を抱き上げて引き下がった。
ビリーは事の経緯を話した。
「何ですって! 奥様の記憶は戻ってチャン・チョルスも来た?」
「…」
「それでは、奥様を見捨てたこともバレたんですか?」
ビリーは首を横に振った。
「アンナは知らない」
「チャン・チョルスはみんな知ってしまったんでしょ? ヤツが話したらおしまいじゃないですか」
「チャン・チョルスとは話をつけた」
チョルスに頭を下げた経緯をビリーは思い浮かべた。
無言の時間が流れた後、ビリーの方から切り出した。
「僕はひどい男です。許されないことをしてしまった。しかし・・・本当に後悔してる。やり直したい」
「やり直したければ――正直に話せばいい」
「あなたは彼女を知らないからそう言う。あなたといた彼女はまるで別人だ」
チョルスはビリーを見た。
「すべて知られたら・・・おしまいだ」
「…」
「チャンさん―このことを黙っていてくれませんか」
「…」
「あなたにも少しは責任があるだろ」
「…」
「僕がどんなに後悔してるかあなたは知らない」
ビリーは涙を浮かべながら訴えた。
「こんなに惨めな姿で、あなたに嘘を頼むほどに―僕はもう一度やり直したいんだ」
チョルスは涙を見せてまで頭を下げるビリーに何を言えばいいのかわからない。
ビリーは続けた。
「アンナの戻る場所はここだ。ここに戻れるように助けてください」
チョルスは夜の海辺でビリーの言葉を反芻した。
アンナを失うのはチョルスにとっても辛い決心だった。
「アンナ…それがお前の名前か。変な名前だな。でもサンシルよりはマシだな」
そうつぶやいてチョルスは唇を噛みしめた。
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