雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第15話(2)




 ビリーは自分たちの額縁写真の前でたたずんでいるアンナを見た。
 そばに歩いていった。
「お前、ほんとに大丈夫か? 病院に行ったほうが」
「部屋が変わったわね」
「君が死んで…いや、あの部屋で君を思い出すのがつらくて―でも、君の物はぜんぶそのままだ」
「本当に――そのままだわ」
「ああ、ぜんぶそのままだ。そうして、君の帰りを待っていたんだ」
 アンナはビリーの方を向き直った。黙って見つめた。
 少しためらった後、ビリーは弁解した。
「”大事な物を探しに来た”と言ったろ。覚えてるか?」
 アンナは黙って疑うような目をビリーに向け続けた。


 コン室長はあわててヴィラ棟に駆け込んでくる。
「社長、チャン・チョルスは…」
 そばにアンナもいて彼はうろたえた。
「コン室長ね」
 コン室長は目をぱちくりさせる。
「頭が痛いから出ていって。一人にさせて」
 ビリーは頷く。
「わかった。ゆっくり休んで」


 ビリーはコン室長を連れ部屋を引き下がろうとする。嫌がるコン室長を抱き上げて引き下がった。


 ビリーは事の経緯を話した。
「何ですって! 奥様の記憶は戻ってチャン・チョルスも来た?」 
「…」
「それでは、奥様を見捨てたこともバレたんですか?」
 ビリーは首を横に振った。
「アンナは知らない」
「チャン・チョルスはみんな知ってしまったんでしょ? ヤツが話したらおしまいじゃないですか」
「チャン・チョルスとは話をつけた」
 チョルスに頭を下げた経緯をビリーは思い浮かべた。
 無言の時間が流れた後、ビリーの方から切り出した。
「僕はひどい男です。許されないことをしてしまった。しかし・・・本当に後悔してる。やり直したい」
「やり直したければ――正直に話せばいい」
「あなたは彼女を知らないからそう言う。あなたといた彼女はまるで別人だ」
 チョルスはビリーを見た。
「すべて知られたら・・・おしまいだ」
「…」
「チャンさん―このことを黙っていてくれませんか」
「…」
「あなたにも少しは責任があるだろ」
「…」
「僕がどんなに後悔してるかあなたは知らない」
 ビリーは涙を浮かべながら訴えた。
「こんなに惨めな姿で、あなたに嘘を頼むほどに―僕はもう一度やり直したいんだ」
 チョルスは涙を見せてまで頭を下げるビリーに何を言えばいいのかわからない。
 ビリーは続けた。
「アンナの戻る場所はここだ。ここに戻れるように助けてください」

 チョルスは夜の海辺でビリーの言葉を反芻した。
 アンナを失うのはチョルスにとっても辛い決心だった。
「アンナ…それがお前の名前か。変な名前だな。でもサンシルよりはマシだな」
 そうつぶやいてチョルスは唇を噛みしめた。



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