雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載91)








 韓国ドラマ「病院船」から(連載91)






「病院船」第9話➡三角関係のはじまり①




★★★


 翌日、ウンジェは一番にハン・ヒスクの部屋に顔を出した。
「聞いたわ」ハン・ヒスクは言った。「私を助けたのは、ソン先生のお母さまのおかげね」
 ハン・ヒスクはウンジェの手を握った。
「これから私が母親になるわ」
「…」
「私を母親だと思って」
「ありがとうございます。生きてくださってありがとうございます」
 ハン・ヒスクはウンジェを見ながら、握った手をずっと離さなかった。




 ウンジェはハン・ヒスクの病室を出た。ハン・ヒスクと亡くなった母親の姿を重ね、ウンジェはひとり声を出して泣いた。  




 母を見舞うため病院にやってきたジェゴルは、自分の親不孝で死なせた母親を追慕して泣きじゃくるウンジェをたまたま見かけた。
 ふだんとかけ離れたナイーブな姿に意外性や可笑しさなどが混じり、拍子抜けさえ覚えるほどだった。
「何だよ…ほんとにソン先生? しかし泣き顔は可愛い…」
 泣きじゃくるウンジェからジェゴルは次第に目が離せなくなってしまった。


★★★


 ジェゴルは埠頭でヒョンがやって来るのを待った。ヒョンが現れる。ジェゴルは迎えに立つ。
「お母さんの具合はどうだ?」
 その問いを無視してジェゴルは切り出す。
「ソン先生が好きか?」
「…?」
「気をつけろ。俺が横取りするかもしれんから」
 それだけ言ってジェゴルは背を返す。


 ロッカールームにやってきてジュニョンはいう。
「三角関係とは古臭いな。それもソン先生をめぐってか? 2人とも物好きだね」
 ヒョンやジェゴルは黙って着替えを進める。
「ここは腹を割って話をしよう」
 ジュニョンはまずヒョンに質問を向ける。
「ヒョンさんはどれくらい好き?」
 黙っているヒョンにジェゴルが挑発する。
「しっかり答えないと俺が奪うぞ」
「どうしたんだよ」とジュニョン。「彼女は好みじゃないんだろ?」
「でもないぞ」とジェゴル。
「ならなぜだ」とヒョン。「理由を聞こう」
 ジェゴルは言う。
「仁義だよ」
「何、それ?」とジュニョン。
「彼女は母の命を救った。だから一生かけて恩を返す」
「仁義で恩返しっていつの時代よ。意味不明だ」
 ジュニョンの話は聞かず、ジェゴルはヒョンの前に立った。
「チョさんのことで彼女を泣かせたら、命を懸けてでも俺は彼女をもらうぞ」
「何で?」
 ジュニョンには話の流れがもうひとつ理解できないらしい。
「何で命を懸けるの?」
「死ぬこともあるかもな」とジェゴル。
「死ぬ?」 
「ああ、うるさく迫ったらメスで切られかねない相手だ。そういうこともあるかもな」
「自分がうるさい自覚も?」
「当然だ」とジェゴル。「俺は大人だからな」
「心構えはばっちりか。どっちもソン先生を取られないように頑張って。重い愛はダメだ。ファイティン!」
 ジュニョンはヒョンに手を出した。
「ファイティン!」
 ヒョンは笑ってジュニョンの手を叩いた。
「ガンバリマス」
 と日本語で答え、外に出た。




 診察室を出るとヨンウンの姿があった。難しい表情…さっきの話を立ち聞きしていたらしい。ヨンウンは切り出す。
「私を拒む理由はソン先生?」
「…」
「そうなの?」
「盗み聞きはよくない」
 無視して行こうとするヒョンをヨンウンの言葉が追ってくる。
「そうなのね。諦めなさい」
 ヒョンは足を止める。
「彼女は諦めないわ」
 ヒョンは振り返る。
「なぜだ?」
「ソン先生の母親を見たのはあなたでしょ?」
「…」
「あなたが死なせた」
「何が言いたい?」
「あなたのミスよ」
「いい加減にしろ!」
「ソン先生はそう考えてるはずだわ」
「…」
「あなたなら愛せる? 母親を死なせた医者を」
 ヒョンは黙った。何も言わないでヨンウンのそばを離れた。







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