韓国映画「ビューティ-・インサイド」から⑩
チェギョン(キム・ウジン)に連れて来てもらった家の前に立った。タクシーの中で他所へ越したかもしれないと思ったりした。ためらいを覚えつつインターホンを押す。
顔を出したのは女性だった。イスは訊ねる。
「ウジンさんに会いに来ました」
二人は部屋のテーブルで向き合った。
「お茶は?」
イスは首を振る。
「他に何か…」
言葉少なで日本語しか話さない女性(ウジン)にイスは戸惑う。
「韓国語は?」
「話せないけど…聞き取れる」
女性(ウジン)は表情を和らげる。
「ああ…(そういえばそんな話もしていた)ウジンさんなの?」
「そうだよ」
「つまり…私を好きなのね?」
「…」
「じゃ…なくなった?(日も流れたし)」
お暇しようか迷い始めた頃、彼女は言った。
「好きだよ」
二人は黙って見つめ合う。
「じゃあ寝ましょう私たち」
「…」
「見たいんです。起きたら変わるウジンさんの姿を」
二人は寝床に入った。横になり向き合った。
「いつから、そうなったの?」
「18歳の時…理由は…あの頃も、今も、分からない」
「…何歳ですか?」
「…」
「あの時話してくれた住民番号は本物?」
女性(ウジン)は膝枕して笑顔を見せる。
「29歳。住民番号も本当だよ」
イスは笑顔を返す。
「本当に同い年だったんだ…敬語で損した」
ウジンは笑い声を響かせる。
「じゃあ死なないの?」
「うっふふふ、まだ死んだことないし…分からないよ」
「いいことはないの?」
「ん?」
「聞き取れないのね…?」
「えっ?」
「はっはは、すごくややこしいね…いいことはないの?」
「ん、どうだろ…イケメンの日にはナンパしやすくなる、ってね」
イスはクスクス笑い、真顔を戻す。
「ねえ…どうして私なの?」
「毎日が…普通じゃなかったんだけど、イスに会ってから、毎日が普通に辛くなった」
「…」
「普通の人みたいに話したり、笑ったりしたくなった。…だけど、どうしようもないから、だから、イスに打ち明けた。自分をさらけ出したの」
「…」
「もし、明日…別の姿になっても大丈夫?」
イスはすぐには答えられない。黙って女性(ウジン)を見つめ返す。
やがて左手をそっと伸ばした。彼女の顔に触れた。今日の彼女の感触を確かめた。”今日の彼の顔はこれが見納めなのね”と思いながら…。
そして次の朝がやってきた。
顔を出したのは女性だった。イスは訊ねる。
「ウジンさんに会いに来ました」
二人は部屋のテーブルで向き合った。
「お茶は?」
イスは首を振る。
「他に何か…」
言葉少なで日本語しか話さない女性(ウジン)にイスは戸惑う。
「韓国語は?」
「話せないけど…聞き取れる」
女性(ウジン)は表情を和らげる。
「ああ…(そういえばそんな話もしていた)ウジンさんなの?」
「そうだよ」
「つまり…私を好きなのね?」
「…」
「じゃ…なくなった?(日も流れたし)」
お暇しようか迷い始めた頃、彼女は言った。
「好きだよ」
二人は黙って見つめ合う。
「じゃあ寝ましょう私たち」
「…」
「見たいんです。起きたら変わるウジンさんの姿を」
二人は寝床に入った。横になり向き合った。
「いつから、そうなったの?」
「18歳の時…理由は…あの頃も、今も、分からない」
「…何歳ですか?」
「…」
「あの時話してくれた住民番号は本物?」
女性(ウジン)は膝枕して笑顔を見せる。
「29歳。住民番号も本当だよ」
イスは笑顔を返す。
「本当に同い年だったんだ…敬語で損した」
ウジンは笑い声を響かせる。
「じゃあ死なないの?」
「うっふふふ、まだ死んだことないし…分からないよ」
「いいことはないの?」
「ん?」
「聞き取れないのね…?」
「えっ?」
「はっはは、すごくややこしいね…いいことはないの?」
「ん、どうだろ…イケメンの日にはナンパしやすくなる、ってね」
イスはクスクス笑い、真顔を戻す。
「ねえ…どうして私なの?」
「毎日が…普通じゃなかったんだけど、イスに会ってから、毎日が普通に辛くなった」
「…」
「普通の人みたいに話したり、笑ったりしたくなった。…だけど、どうしようもないから、だから、イスに打ち明けた。自分をさらけ出したの」
「…」
「もし、明日…別の姿になっても大丈夫?」
イスはすぐには答えられない。黙って女性(ウジン)を見つめ返す。
やがて左手をそっと伸ばした。彼女の顔に触れた。今日の彼女の感触を確かめた。”今日の彼の顔はこれが見納めなのね”と思いながら…。
そして次の朝がやってきた。