「泣けない忍者・鳴かないイヌ」
まだ歳若い忍者に数年前、ある任務が下りた。
「奴を殺せ」
そして彼はその命令を遂行しようと必死だった。
一人前の忍者になろうと必死だった。
その者を観察し、その者を追い、隙を窺った。
いつでも可能だったのかも知れない。
しかし観察し、追い、隙を窺えばそうするほど
自分との距離が近くなればなるほどに
その者との距離が遠のいてしまった。
あとどのくらいすればいいのだろう・・・
手の平、指が小刻みに震え、止まらなかった。
真っ直ぐに悲しみを眺めた。
彼には何も見る事がまだ出来なかった。
奴は奴自身は、何故彼を見過ごす振りをしているのか。
月日は彼をどう思ってるのか。
若い忍者は初めて孤独を感じた。
いや改めて孤独だと感じた。
そして彼は一度、頭の上の板から下りてみた。
すると一匹の犬が近寄ってきた。
その犬は若い忍者を見て何の反応も示さなかった。
違和感がある違和感の無い空気があった。
「奴を殺せ」
彼はその任務の事が彼にはなくてはならないモノだと
何の根拠もなく感じた。
隣にいる空気の様な犬の頭を撫でてやった。
抜けた毛が震える指にまとわりついた。
しばらく経ち、若い忍者はまた頭の上の板を上り始めた。
一瞬あの犬に目をやった。
犬は何も反応しない。
前足で耳の後ろを掻きだした。
若い忍者の口元に少しだけ笑みがこぼれた・・・・・・。
まだ歳若い忍者に数年前、ある任務が下りた。
「奴を殺せ」
そして彼はその命令を遂行しようと必死だった。
一人前の忍者になろうと必死だった。
その者を観察し、その者を追い、隙を窺った。
いつでも可能だったのかも知れない。
しかし観察し、追い、隙を窺えばそうするほど
自分との距離が近くなればなるほどに
その者との距離が遠のいてしまった。
あとどのくらいすればいいのだろう・・・
手の平、指が小刻みに震え、止まらなかった。
真っ直ぐに悲しみを眺めた。
彼には何も見る事がまだ出来なかった。
奴は奴自身は、何故彼を見過ごす振りをしているのか。
月日は彼をどう思ってるのか。
若い忍者は初めて孤独を感じた。
いや改めて孤独だと感じた。
そして彼は一度、頭の上の板から下りてみた。
すると一匹の犬が近寄ってきた。
その犬は若い忍者を見て何の反応も示さなかった。
違和感がある違和感の無い空気があった。
「奴を殺せ」
彼はその任務の事が彼にはなくてはならないモノだと
何の根拠もなく感じた。
隣にいる空気の様な犬の頭を撫でてやった。
抜けた毛が震える指にまとわりついた。
しばらく経ち、若い忍者はまた頭の上の板を上り始めた。
一瞬あの犬に目をやった。
犬は何も反応しない。
前足で耳の後ろを掻きだした。
若い忍者の口元に少しだけ笑みがこぼれた・・・・・・。