店によってはニンニクを効かせたり、香草を加えたりして味に変化を付けていた。まずは1個だけフォークでぷっくりした、オレンジ色の中身をほじくり出して食べる。後はカラをトング代わりにして身をつまみながら、ワインで流し込むのだが、ホントにこたえられない。
通常ぼーずは海産物にぶっきらぼうな位の辛口ワイン、ペッシェヴィーノやシャブリを合わすのだが、このムッシェルには中辛(といってもやや甘い)のモーゼルが合うのが不思議だった。(最高なのは平たい壜のフランケン)
また、身から出汁が出るのだろう。ボールの底にはかなりのスープが残るのだが、これがまた美味い。コンソメとして楽しむのもいいが、パンを注文し浸して食べるといい締めになった。ヨーロッパでは季節外れの珍品に高値を付ける悪癖はなく、旬になると美味くて安い食材がどっと市場に出る。こーゆーの好きなんだがなぁ。温室育ちの巨大なイチゴを12月に食うのは絶対におかしいと思う。
このムッシェルが欧州の海にあるのを見たことがないのだが、日本で岩にびっしりとくっ付いている貽貝と同種じゃないかと思った。あれなら嫌ほど採れると思う。白土三平さんの本に『場所によっては貽貝を救荒食料とする為、普段は採取を禁じている』と書かれていたが、それほど簡単に多く採れるという証拠だろう。
ぼーずが小さい頃、うちの辺ではムール貝に似た喫水域の岸壁につく貝をドブ貝と呼んでいた。ウェブで調べると、ドブ貝とはシジミの化けもんのような淡水貝で、正しくはムラサキイガイのようだ。但し、ドブ貝の名がぴったりの場所に生息しており、正直あれはちょっと食う気にゃならん。生で食ったらまず間違いなく腹を壊すと思う(笑)。
実は駐在した最初の冬、そう思ってしばらくムッシェルは食べなかったのだが、余りに美味そうに皆が食うので釣られてしまった。最近は日本のファミレスですらムール貝を出すところがあるが、出所は一切気にせず食べられるようになった。ドブ貝とよく似た貝だが全く違う種類と堅く信じることにしたからだ。
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