オランダの絵本である。
翻訳は野坂悦子さん。
野坂さんは、オランダの絵本や児童書に於いて翻訳の先駆者である。
オランダ語の児童書と言えば、『アンネの日記』なのだが、それだけではないという仕事をしてきた人だ。
オランダ語は言語として非常にマイナーな言語なのにもかかわらず、果敢に翻訳活動をしていることは、すごいなぁと思う。
野坂さんは、ご主人の転勤でオランダへ行き、それからオランダ語を習得したそうだ。
渡蘭の状況だけは、私と同じだと思うのだが、それからの努力が、野坂さんと私の、今のこの現状の差になっているのだと、納得 (^^;)
最近は、オランダの絵本や児童書の翻訳も、野坂さん以外の人も活躍するようになった。
これも、すごいなぁと思う。
オランダの絵本は、かなり独創的で抽象的だし、センテンスも長文だ。
オランダの子どもたちは、こんな長文を読み、または、聴くのだということに、実に驚く。
日本では、絵本の一ページの字数は、大体、600字前後と編集者に言われるし、いわゆるカルチャーセンターなどの文化教室でも、そのように指導されるらしい。
更に、幼児絵本であれば、もっと文字数は少なくなる。
絵本には、長い文章は無理、という思い込みにも、呆れる。
それで、『ボッケ』
これは、ある時、主人公の自分の影というか分身が柳の木の中に棲むというお話しで、この二人がいろいろ経験することを、詩のように綴られている。
分身の名前がボッケという。
多分、幼児絵本というジャンルだと思う。
表紙を、見てみると『BOKJE』とある。
単語の語尾にJEがつくと、小さいということを意味する。
例えば、Kind は、子どもだが、これが Kindje とje が語尾に付くと、小さな子ども、つまり生まれたばかりの赤ちゃんではないけれど、例えば歩行などはちょっと無理かもというぐらいの赤ちゃんということになる。
このことから憶測すると、タイトルは正確には『ボッケ』でなく、『ボッキェ』 と言う風になるのかと思う。
小さなボッケというわけである。
翻訳する場合、直訳が、かならずしも素晴らしいということは決してないので、野坂さんのタイトルが、原文に対して正確ではないと言っているわけではない。
ちょっと、je という意味について、そうだったなぁと、思い出しただけの余談である。
なんぞと、このような屁理屈を並べているが、この『ボッケ』を開くと、その難解さに感心する。
子どもにとって、抽象性は、問題ないのかも知れない。
そもそも、その存在自体が、まだ抽象の世界にいるんだものね。
幼児対象の絵本だって、分かりやすいということが、一概に是である限らないと知る。
先に記したように、オランダの子どもたちは、このように抽象的で、長文の絵本に抵抗はないようなのだ。
それに、ちゃんと、オランダでは、売れているのである。
<追記>
因みに、世界的に有名なディック・ブルーナ作の絵本『ミッフィ』ですが、ディック・ブルーナはオランダ人です。
オランダでは、このうさぎのキャラクターの名前は、『ミッフィ』ではなく『Nijntje Pluis』(ナインチェ・プラウス)と言います。
ここにもje が付いているのです!!
je は、いわゆる日本で、今、すっごく流行の、“カワイイ〜” という概念と共通するような気がします。
ところで、昨日(2月17日)、ディック・ブルーナさんが、亡くなったそうです。
89才だそうです。
絵本『ミッフィ』
長らく『うさこちゃん』と翻訳された時期の絵本
去年発売だった切手
オランダへ行くたび、姪の娘たちの希望で、ミッフィの人形をお土産に求めました。
今、5才と3才の姪の娘たちは、ミッフィが大好きです。
なぜ、そんなに、好きなのか、不思議です。
我が家には、実は、『ミッフィ』の絵本は、一冊もありません。
子育て中の時期、私は我が子のために、買い求めなかったのです。
私は、意固地、偏向教育の親でした。
絵本は買わないのに、切手を、買っててよかった。なんか、ちょっと申し訳がたつような……。
合掌。
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