ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『オリンポスの果実』 田中英光 著 新潮文庫

               


 リオオリンピックが、始まった。
 私は、己の身体を動かすことは好きではないが、スポーツ観戦は、殆ど種類を問わず、大好きだ。
 昨日から、仕事をなにもせず、テレビをしっかり、観ている。

 今、ウエイトリフティングの、女子53キロ級の結果がでた。
 八木かなえ、6位。えらい!!
 競泳も、なかなか、面白かった。
 柔道は、もっと気楽でやればいいのにね〜。お家芸って言葉、どうも嫌い。なにがお家芸だっ! 柔道は金しかない!みたいな、こういうプレッシャーのかけ方、ほんと、虫唾もんです。
 銅、上等! 素晴らしい!!
 だから、野村の3回連続金メダルは、それこそ驚異の不世出であって、本来なら国民栄誉賞、3回はもらってもいいぐらいの偉業なのだ。

 そんなふうなことを思いながら、テレビの画面を眺めていたら、ふと、『オリンポスの果実』を思い出した。
 これ、中学生の時か、高校生の時に、読んだ本。

     かにかくに杏の味のほろ苦く舌にのこれる初恋のこと

 なーんて、短歌が、小説中に書かれてて、思春期の少女であった私の脳にしっかりと、記憶されているんだからなんとも、驚き!

 それで、ちょっと調べてみたら、1940年、昭和15年の出版である。
 この初版本の序文は、太宰治が書いている。
 これにも、ちょっと驚いた。

 ストーリーは、ロサンゼルス・オリンピックにボートの選手として参加する坂本という男の人の初恋物語。
 当時は、船で、開催地へと向かった。
 その船上の、淡い片思いの恋である。
 坂本が、心を寄せた女性は熊本秋子という名で小説に書かれているが、モデルの名前まで相良八重と明らかになっている。
 
 田中自身が、戦前、1932年に経験に基づいた私小説だという。
 
 いい年になってしまった私には、私小説って、どうも苦手。恥ずかしくなるのだ。
 というか、私小説というジャンルも、いつの間にか、なくなった。
 田中英光は、太宰の墓前で自殺を試み、搬送された病院で亡くなった。
 田中にとって、「オリンポスの果実」は、青春の清々しいほどの記憶だったのだろう。
 
 
 今や、だれも知らないような小説だが、ずっと新潮文庫から出版されている。
 2016年、リオオリンピック観戦の深夜、なんと、私は、驚きの大連発なのである。

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