ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『インゲルちゃんのことり』(ピクシー絵本) エバ・ウェンツエルブルゲル 文 絵 福島のり子 訳 小学館

 

ピクシー絵本というのがある。
ピクシー、小さな妖精という意味の通り、デンマークからやってきた、一辺が10cmという正方形の、小さな絵本である。
本屋さんの書架の壁面やレジ前の壁に、透明なドーム型のプラスチックのケースに、この小さな絵本がドサドサッと入っていた。
出版当時(1970年代)は1冊、60円だったらしい。
私が買うようになった1988年ごろからは、80円だった。
それでも、安い。
1986年出版の『アルザスのおばあさん』は1400円の時代である。

小学館から66冊、出版された。
現在は、驚くほどのプレミアがついた古本か、数年前にフェリシモ出版から販売されたが、これもすでに絶版。
フェリシモ版は5冊6セットの販売で、1冊単価にすると税込みで約300円。
小学館版とは、翻訳者が変わって、書名も異なり、例えば、画像をupした『インゲルちゃんのことり』は、『せきせいいんこのハンス』(ふくいのぶこ訳)となっている。当然、センテンスも異なる。

デンマークでは、今でも出版されており、その数は300冊とも400冊とも聞く。
内容は創作、民話、科学物、乗り物、動植物物、などなど種類も豊富である。
絵も北欧独特の色彩で、動物たちのデフォルメも妙にリアリティがあるのに可愛い、その滑稽さがなんとも良い味だったのだ。
きっと、本好きの子どもが、育つんだろうなぁーと思えてならない。

どうして、こういう良い本を、日本では、出版しなくなるのだろう。
一人単価の低さのせいだろうかと、うがってしまう。
子どもにとってピクシー絵本との出会いは、透明ドーム型のケースに手をしのばせる、その時は、もうホントに、心が、ワクワクふわふわに、なったんじゃないかと思うけれど。
昨年の夏のこと、ドイツの本屋さんにもハンガリーの本屋さんでも、昔と変わらないドーム型の透明のケースが設置されて、ちゃんと販売していた。

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