ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『笑うカイチュウ 寄生虫博士の奮闘記』 藤田紘一郎 講談社文庫

 

カイチュウというのは、人体に寄生する回虫のことである。
サブタイトルにあるように、寄生虫学の研究者の書いたエッセイなのだ。
寄生虫の数々、種類はいろいろあるけれど、例えば、有名どころ、一例を挙げるとサナダムシ。
このサナダムシ、体長10m のものもあるという寄生虫が、人体腸内に棲んでいたという歴史的事実、こわいね~(^_^;)
サナダムシって、今、放映中のNHK大河の、あの真田!
信州真田の主産業である、真田紐が由来の名称なのです。
真田様には、なんともお気の毒!人体腸内に生存し、真田紐の如く、細くて長くて丈夫ってことから、ついたらしい。

藤田紘一郎を、20数年前、岩波書店の広報誌『図書』に連載していたエッセイによって知った。
そのエッセイは、面白く、まさに回虫博士の奮闘記で、大いに笑ったものだった。

それで、単行本が出たときに、すぐに買ったのが、これ。  
奥付をみると、1994年とあった。

その後、文庫になって、さらに山ほどの著書を出版している。
藤田がエッセイに記している研究の成果によると、回虫を体内に飼っていると、アトピーの発症、花粉症の発症などにたいしかなりの抑止力になるという。
回虫の人体駆除率と、アトピー、花粉症の発症率は、きれいな放物線を描いて交差し、双方のの現象は見事に反比例する。
更に、ダイエット効果が著しいらしい。
ジャクリーヌ・ケネディの再婚相手オナシス氏の、かつて愛人だった、かの有名なソプラノ歌手、マリア・カラスは、肥満に悩み、意図的にサナダムシを体内で飼っていたということは、周知の事実。
で、今、我が下腹部に、がっつりとついているダラダラ肉に見入って、このダブダブ脂肪下の腸内にサナダムシを飼えるか?と想像すると、イヤー、これって、チョー、ムリィ~!!

現代は観光で、回虫現存エリアに行く人が増えて、日本人にも、回虫飼育者が増加しているという。
でも、回虫撲滅後に医学部で勉強した医師たちは、カイチュウなんぞの症例概念はまったく予想外。
初めて診る症状だったので、診断がかなり困難だった奇病だったらしい。
チョコレート風虫下し剤の、私ら世代にとっては、これこそが、予想存外。

と、いう訳で。私にとっては、とってもウケた書物で、大いに笑い、大いに学んだ。

それで、ある時、
知人のお嬢さんが、拒食症と引きこもりになって、悩んでいた。
私は、ちょうど、『笑う回虫』に、大ウケのタイミングだったので、「この本、笑えるよ。お嬢さんの気晴らしになると思うわ」なんて言い、貸して上げた。
なんとも拙い、オーマイガッー!である。

貸して上げてから、拒食症→回虫 の連関に、はたと考えが及んだとき、すでに、時遅しだったのだった。
ああ、せめても、『笑うカイチュウ』と一緒に、サイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』のCDも、貸して上げたことが、慰め……という私の浅はかさなツライ思い出が甦る本なのである。

追記
なんと、<公益財団法人目黒寄生虫館博物館>が、昨今、はやりのデートスポットとらしい。

で、
人間、浄化し過ぎも、民族、浄化し過ぎも、これって、どうかな? って、ことだよね。

最新の画像もっと見る

最近の「今日の一冊 」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事