ヨタヨタ、ブカブカになっているこの本を手にとると、後藤竜二を思い出す。
随分前に、後藤竜二の著作の評論を書いたことがある。
たまたま後藤さんと会う機会があり、後藤さんが資料として読んだ本の話しになった。
その本を私も読んでみますというと、「それなら、貸してあげるから」とおっしゃって下さって、資料を数冊、お借りしたことがあった。
その本を見たとき、私は、資料はこのように読むのだと、知った。
私は、書籍に対し神聖化というかありがたがるというか、線を引くこともできないような読者だった。
後藤さんからお借りした本には、付箋の代わりにページの片隅を三角に折り、赤鉛筆で線を引き、書き込みをし、何度もページを開いた痕跡が、しっかりと残っていた。
本は、資料は、このようにして読むのだと、知ってから、今まで以上に、自分が読んだ資料本に愛着を感じているような気がする。
『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』は、本当に何度も何度も読んだ。
その結果が、このヨタヨタ、ブカブカだ。
表紙カバーも内側折る部分が折切れて、きれいにカッターで切ったように破れた。
セロテープで貼り合わせたので、更にブカブカになってしまった。
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